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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

ファストフードで免疫力が低下か…栄養素をサプリで補給せず、食生活を改善すべき!

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)騒動を受けて、「免疫力」が話題になっています。どんなことにでも言えますが、正しい認識を持つことはとても大事だと思います。しかし、往々にして情報というものは玉石混淆で、悪意を持って間違った情報を流す人もいれば、知らずに偽りの情報を流してしまう場合もあり、困ったものだといつも思います。筆者はそれらの害から逃れるために、まずテレビを見ない、SNSの情報はいきなりまともに受け止めない、基本的に知人の情報を見聞きする、ということにしています。

 何を信じるかによって、その人のその後の判断や選択が大きく変わってしまうことだってあります。それもすべて含んだ上で自己責任と思ったほうがいいのかもしれません。そういう時代なのだと言えなくもないでしょう。

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 免疫がいかなるものであるのかについても、さまざまな意見があります。筆者は以前から、免疫力にダメージを与えるのは、慢性的な炎症であると言い続けており、それは日々の食生活によって改善できるものであるとの考えを表明してきました。言うまでもありませんが、その考えは些かなりとも変わってはいません。

 喘息などのアレルギー疾患は、いわば炎症反応がなんらかの形で表面に出てきたものであり、それがあることで免疫力が落ちるとも考えられます。

 ある製薬会社の資料によれば、ファストフードの摂取頻度が高くなればなるほど、喘息が重症化するリスクも増加するとのこと。その資料では、喘息の重症化のリスクは、ファストフードの摂取量が週1回未満の人に比べて、週1~2回の人の場合は1.09倍、週3回以上になると1.34倍になるということです。これはおそらく喘息に限ったことではなく、あらゆるアレルギー症状にも同じことがいえるのだろうと、容易に想像がつきます。

 また、妊娠中の母親がファストフードを食べた場合に、子供にどの程度の影響が出るのかについても報告があります。妊娠中にファストフードをまったく食べなかった母親に対して、週1回食べた場合、子供が重症の喘息になるリスクは1.26倍、週3~4回食べると2.17倍、毎日食べてしまうと、なんと4.46倍にまで高まってしまうのです。これは母親だけの問題だとは思えず、父親にも多大な責任があると筆者は考えています。

 これは、ただひたすらファストフードが悪いということを意味しているのではなく、ファストフードが食事のなかでの領域を広げることによって、摂取できる栄養素に偏りが出る、ということの証左なのではないかと、筆者は考えます。つまり、ファストフードばかり食べていたのでは必要な栄養は摂れないということを言いたいのです。

 もちろん、筆者はファストフードを食べませんし、家族や親しい友人たちにも「食べないほうがいい」と伝えてはいますが、自分たちがファストフードを食べなければこの問題が解決に導かれるのかというと、それほど単純な話でもありません。これはある意味、社会全体の問題なのです。人間の体が何を摂取するのかによって、また摂取の仕方によって、私たち自身の健康はどうなるのか。そして究極は、私たちは何を食べるべきなのか、というところに行き着くのだと思います。

サプリメントに健康効果を期待すべきではない

 栄養素のことになると、すぐに「不足するものはサプリメントで補えばよい」と考えてしまう人もいますが、それは短絡思考です。栄養素が不足することはよくないことではありますが、過剰摂取はもっとよくないのです。

 厚生労働省の調べでは、日本人の30%の人が毎日、なんらかのサプリメントや健康食品といわれるものを利用していることがわかっています。また、過去の利用経験まで含めると、なんと80%の人が利用したことがあるとのことです。さらに驚くのは、サプリメント、健康食品の市場規模は、今や年間約2兆円にも上るそうです。その売り上げに貢献している人のなかには、長きにわたって過剰摂取を続けている人もいるかもしれません。筆者の考えではありますが、そういう方はいつの日かネガティブな反応が起きる危険性もあると考えたほうがいいのかもしれません。

 サプリメントというと、多くの方は、それになんらかの健康効果を期待すると思うのですが、分類上、サプリメントは健康食品と同じ扱いで、法律上の定義がありません。だから「~~に効く」とか「~~が治る」などという表現をしなければ、何を言ってもお咎めはなしで、あとは受け取る側の問題ということになっています。たとえば「血圧高めの人に」という表現や、「脂肪の吸収をおだやかに」のような表現は、何かを言い切って効果があると断定するわけではなく、あくまでも受け取る側が勝手に、その先の言葉を想像するように仕向けているだけなので、許されるというわけです。

 筆者の意地が悪いのかもしれませんが、「昨日まで酒を売っていた会社が、いきなりサプリメントかよ」とか、「おいおい、石鹸つくっていると思ったらトクホの油を食えってか」などと、ツッコミを入れたくなってしまうのです。

 医薬品類(医薬品、医薬部外品)が厚生労働省の管轄であるのに対し、健康食品(サプリメントを含む)は消費者庁の管轄になっています。大きな分類では「健康食品類」として括られ、その中には「その他健康食品」と「保健機能食品」という分類があります。保健機能食品のなかには「特定保健用食品(トクホ)」「機能性表示食品」「栄養機能食品」があります。それらとは別に「その他健康食品」という分類があるということですが、納得がいきません。

 本連載の過去記事でトランス脂肪酸について言及した際にも書きましたが、明らかに国民の健康にかかわることであるにもかかわらず、厚生労働省の管轄ではなく消費者庁の管轄にしているということは、国が国民の健康問題を消費の問題にすり替えているようにしか思えないのです。

 現時点でサプリメント、健康食品に関しては、公的な審査や許可制度があるわけではないですが、製品によっては薬以上に役立つサプリメントがあることも筆者は承知しています。ただしそれは、きちんとしたサプリメントアドバイザーの指導によって、厳密に量まで規定して初めて効力を発揮するのです。

 諸情勢を鑑み、今後、国がなんらかの資格制度をつくり、それに基づいて国民が本当の意味の健康でいるためにサプリメントを活用するという時代が来るかもしれませんが、それまでは曖昧模糊とした宣伝文句のなかから真実を見つけ出す努力をし続けなければなりません。

 しかし、筆者としては、どのサプリメントを選ぶかなんてことを考えたり、調べたりするよりも、真っ当な料理をつくって食べればいいと思います。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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