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山本康博「なぜあの商品はヒットしたのか/しないのか」

熱で髪を傷めない画期的ドライヤー登場!髪もまとまり水分保持、「頭でっかち」卒業

文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役
熱で髪を傷めない画期的ドライヤー登場!髪もまとまり水分保持、「頭でっかち」卒業の画像1Dysonスーパーソニック(「Dyson HP」より)

 家電製品でよく知られているダイソンからドライヤーが発売された。ダイソンが理美容品を手掛けるのは初で、話題性はもとよりその機能においても注目を集めている。今回はそのドライヤーについて“ヒットの正体”を探ってみよう。

 ダイソンから発売された「Dysonスーパーソニック」は、今までのヘッドにモーターを搭載する“頭でっかち”な形状ではなく、小柄かつパワフルなモーターをハンドル部分に搭載することによってドライヤーの歴史を大きく塗り替えた。形状も画期的だが、このドライヤーには髪をいたわる機能がたくさん搭載されている。

(1)最適温度を保つインテリジェント・ヒートコントロール機能

 髪をブローする際、過度な熱を当てると髪が傷んでしまうが、一定の熱量は必要。このドライヤーには「インテリジェント・ヒートコントロール」という機能がついており、温度センサーから信号が送られ、温度が上がりすぎないようにコントロールされる機能が備わっている。

(2)マイナスイオンの風

 マイナスイオンの効果は「髪を保湿すること」ではなく、静電気を抑えて髪のまとまりをよくすること。乾かしすぎや熱によるダメージを防いで、必要な水分を保持してくれる。

(3)早く乾かすためのコントロールされた風

 髪はあまり長く時間をかけて乾かすものではない。ただ、風が高速なだけでは早く乾かすことはできない。ダイソンのドライヤーは、高速回転のモーターを使うことはもとより、風圧と気流の適切なバランスを取り、風をコントロールしている。

形状を根本から革新

 上記のような機能もしっかりとこだわっているが、なんといっても目を引くのがその形状である。50年間変わらなかったドライヤーの形状を根本から考え直し、当たり前だとされてきた姿を初めて変えた。ヘッド部分に集中していたモーターをハンドル部分に収めることによって、バランスの良いドライヤーが誕生したのである。

 ダイソンは初のカテゴリーである理美容品に95億円もの研究投資をして毛髪研究所を設立して、今までにない商品を作り上げた。こうした失敗を恐れない勇気のある企業姿勢は、社員個人がヒット商品を生み出すために必要なものである。

 ダイソンは従来のしきたりや決まり事にとらわれず、消費者が何を望んでいるかを考え、「お客は商品の形を見ないと理解できない」という思想の下に消費者のニーズを商品として具現化し提案していく姿は、まさに米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ流だ。

山本康博

山本康博

ビジネス・バリュー・クリエイションズ
代表取締役、損保ジャパン顧問。ブランドマーケッター。日本コカ・コーラ、日本たばこ産業、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本制作。1年以上継続した商品は計算すると3割以上、メーカー側でマーケティング実績35年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や寄稿、企業研修、大学等でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、2016年スタンフォード大学 David Bradford 名誉教授、ボストンカレッジ Allan Cohen 教授の推薦書として、世界に向けて英著、 “Stick Out”a ninja in Japanese brand marketingを全世界同時発売開始。『Stick Out~a ninja marketer』(BVC)、現在ブレイク中で話題のAmazon書籍総合1位も獲得したベストセラー『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版)の一人として8月1日執筆など。

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