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大ブームの水素水、がん予防や美容効果なんてなかった!高額商品も無意味

文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト

水素水の人体への効果は不明

 しかし、活性酸素は体内のいたるところで発生するので、水素水でどれだけの活性酸素を除去できるのかはわからないといえます。というのも、水素水を飲んだ場合、それは口内、食道、胃、小腸、大腸と通過していきます。したがって、それらの器官に存在する活性酸素はある程度除去できるかもしれませんが、そのほかの各臓器や各組織に存在する活性酸素にまで水素ガスが到達するのかは疑問です。体内の活性酸素をどれだけ除去できるのかも不明なのです。

 消費者の生活や健康を守る行政活動を行っている国民生活センターも、同様な見解を示しています。同センターは3月、「活性酸素の一種を抑制する水をつくるとうたった装置 -飲用による効果を表したものではありません-」と題した報告書を発表し、水素発生装置でつくられた水素水について、「広告に記載されているヒドロラジカル抑制率は、飲用による効果を表したものではありません。人体への効果と関連付けて考えないようにしましょう」と、消費者に向けて注意喚起しました。

 国民生活センターや全国の消費生活センターなどには、水素発生装置に関する相談が、2010年度からの5年間で220件寄せられ、とくに14年度は前年までの2倍近くに増えたといいます。相談内容は、「『がんが治る』などと勧められて購入したが、本当に効果があるのか」「期待した効果がないので解約したい」などというものです。そこで、国民生活センターでは、2社の製品についてテストを行いました。

 その結果、水素発生装置で生成した水素水には、ヒドロキシラジカル消去能が見られましたが、発生させるヒドロキシラジカル量を多くした方法では、消去率は低下したといいます。また、2社のホームページやパンフレットには、それらの水素水については、水の中のヒドロキシラジカルを抑制することが示されている一方で、「抑制率のデータは人体に対する効果・効能を表すものではない」旨の記載が見られたとのことです。つまり、メーカーも人体での効果は確認していないということなのです。 

 市販されている水素水は、いずれも水に水素が溶けているという点では、水素発生装置でつくられた水素水と変わりがありません。そして、市販の水素水を販売している企業も、体内での活性酸素の除去効果についてはわかっていないようで、効能・効果を示唆するような表示はありません。製品によっては、「水と一緒に吸収された水素は、活性酸素の除去に役立ちます」との表示がありますが、どの程度除去するかについては触れていません。

 どうやらネットや雑誌などで、水素水が活性酸素を除去するという試験管内の実験データが誇大に宣伝され、人体にも同様の効果があるという話にすり替えられ、水素水の人気が高まっているようです。その結果、値段の高い水素水を購入する人が増えているのです。

 しかし、試験管内の実験結果と人体に対する効果とは別物です。くれぐれも、巧妙な宣伝や話題づくりに惑わされて高い買い物をさせられないように気を付けてください。
(文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト)

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

1954年9月生まれ。栃木県宇都宮市出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題紙の記者を経て、82年からフリーの科学ジャーナリストとなる。全国各地で講演も行っている

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