4人と連絡先交換、ビール3杯で5000円
そこに座っていたのは、年齢層がバラバラと思われる男女9人。中央にどっしりと構えていたのが、恵比寿横丁の常連だというAさん(40代男性)だ。Aさん曰く、この横丁が「出会いの場」となったのは、ここ数年のことのようだ。隣の人同士が酒の勢いで自然と会話を交わすようになり、そこからフレンドリーな飲みの場→男女の出会いの場→有名ナンパスポットへと、客層とともに変わっていったという。
Aさんは、そんな出会いの場の仲介人として存在している。彼は「こっちで、初対面同士で飲んでるから来ませんか?」と声をかけ、男女問わず酒宴に巻き込む。彼は、人と人とをつないでワイワイやるのが好きらしい。事実、私が入ったその輪も、ほとんどがAさんの呼びかけで集まった初対面の人たちで構成されていた。みんな、人たらしともいえる彼の熱にほだされた格好で、とても友好的だった。
よくよく考えれば、東京という世界有数の人口密集地域に暮らしている以上、日常の中で多くの人と隣り合わせや背中合わせになる。そんな時、隣人同士が「隣は赤の他人」という意識で無視を決め込んでいるのは、おかしな話だ。
ほんの少し勇気を振り絞り、近くの人にあいさつするだけで何かが生まれるかもしれない。それなのに、「社会人になってから出会いがない」「友達ができない」「恋人ができない」などと嘆くのは、いかに滑稽なことか。豪快に笑うAさんを見て、ふと思った。
結局、この日は女性3名、男性1名と連絡先を交換し、「また飲もう」となった。ちなみに、料金はビール3杯しか飲んでいないのに、Aさんからは5000円を請求された。
「もしや、人たらしではなく、ビジネスとして人を呼び込んでいるんじゃ……」と邪推してしまったが、仮に自力でナンパした女性たちと飲んだとしても、おごるとなればそれくらいの出費はあるだろうから、目をつむろう。そんな、不思議な出会いのある恵比寿横丁。あなたも、訪れてみてはいかがだろうか?
(文=小島浩平/ロックスター)