宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

抗菌・薬用石鹸等は人体に有害の危険?「抗菌効果高い証拠なし」として販売停止、米国で


 FDAは、ハンドサニタイザーなどの抗菌製品に関する調査も進めており、すでに家畜への抗生物質投与の規制も強化しています。ハンドサニタイザーとは、日本でもO157の集団感染以来、病院や公共施設などに多く設置されるようになった手指用のアルコール殺菌・消毒剤です。洗い流さないので、成分がより長く手指に留まることも問題視されています。

「20世紀最大の発見」といわれる抗生物質が世に出てから、抗生物質が効かない耐性菌が現れれば、その耐性菌に対する新たな抗生物質を開発し、また新たな耐性菌が現れる……。このように、菌と人間のイタチごっこが繰り広げられているわけですが、実際は耐性菌に対する新たな抗生物質の開発はあまり進んでいないのが現状です。

 新しい抗生物質の開発が進まない理由は、開発技術よりも薬剤の投与期間によるところが大きいようです。抗生物質はその性質上、長期の使用が見込めません。耐性菌に効果のある抗生物質を開発しても、短期的な投与で治癒する抗生物質よりも、生活習慣病の薬のように長期的な投与が期待できる薬のほうが、開発費をかける価値があると製薬会社は考えるのでしょう。企業ですから営利を求めるのは当然のことです。

 仮に、営利を抜きに耐性菌に有効な抗生物質を開発できたとしても、乱用によってまた新たな耐性菌が出現してしまえば、細菌と人間のイタチごっこは繰り返されることになります。

 抗生物質の登場が、それまで助からなかった多くの命を救ったことは事実です。医療の現場でも抗生物質は大いに威力を発揮してくれています。

抗菌・除菌製品の使い過ぎで耐性菌増加のおそれ

 日常生活において、私たちはあまりにも手軽に頻繁に抗菌・除菌製品を使い過ぎてはいないでしょうか。

 もしも、この行為が耐性菌を増やすことにつながっているのだとしたら、逆に感染リスクを高めてしまうことになります。

 日本人は世界一清潔好きともいわれています。菌に触れることを恐れる消費者に対して、抗菌製品のメーカーも新しい成分、優れた機能を追加して他社製品との違いをアピールし消費意欲を刺激してきます。

 私たちの皮膚にはもともと常在菌が棲んでいます。これらがバリアの役目をして外からの菌を寄せ付けずにいてくれるのです。私たちには、本来、自分の力で防御し回復する力が備わっているのです。

 今回の抗菌製品の規制をきっかけに、どんな物に対しても、それを使うことによる弊害、将来への影響も考えて慎重に選ぶことが必要なのではないでしょうか。

 何事にも過剰に反応してしまう現代だからこそ、もう一度、原点に返ってみませんか。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

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