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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

肥満者は「重要な仕事」に就いてはいけない?命を奪う睡眠時無呼吸症候群の危険な兆候?

文=新見正則/医学博士、医師

 簡単な検査は自宅で行えるもので、いびきの頻度を記録し、体の酸素濃度を皮膚から測定する機械(経皮酸素分圧測定装置)などを用いて、酸素の取り込み不足があるかをスクリーニングします。そして睡眠時無呼吸症候群が疑われるときには、一泊の入院をして、睡眠のステージや呼吸パターン、そして経皮酸素分圧などを調べます。確かに非常識君が言うように、命を預かる仕事の人全員に簡易検査を行い、そして異常を疑われる人には精密検査を科すことは理にかなっています。

専門医の受診

 常識君が質問します。

「自動車の運転も、同乗者を含めて、歩行者などの命を預かっています。そうすると、自動車免許の取得時・更新時にも睡眠時無呼吸症候群の検査が必要になります。それではあまりに、範囲が広すぎないでしょうか」

 非常識君が少々トーンを下げて追加発言です。

「では相当な肥満の方、仕事中によく居眠りをする人、夜中にいびきを頻回にかく人などに、簡易検査を義務づければいいですね」

 確かにそうですね。すると常識君がコメントします。

「睡眠時無呼吸症候群は、200万人の患者がいるともいわれています。そして多くの人は気がついていません。一緒に寝ている人が、なんとなく変だと気がついていることはあります。そしてこの病気では、常時酸素が欠乏している状態なのです。つまり、泳ぎが上手でない人が、必至に溺れそうになりながら、息継ぎをして、沈まないようにがんばっている感じです。ですからいろいろな病気の頻度を増加させます。高血圧、糖尿病、脂質代謝異常などの生活習慣病になりやすくなります。

 また肥満が原因のひとつですが、睡眠時無呼吸症候群では太りやすくなります。がんの発生頻度も数倍になるという報告もあります。そして治療は、肥満者ではまず痩せることです。アルコールでいびきが増える人は、まずアルコールを控えることです。そして軽症ではマウスピースを作成すると息がしやすくなることがあります。酸素を十分に行き渡らせるという目的での究極的な治療方法はCPAP(持続的陽圧呼吸療法)というもので、睡眠時にはマスクを常時装着して、そして機械で空気を肺に強制的に送り込みます。こんな面倒なことをしても、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの場合は、快適な睡眠が十分に取れたと実感するのです」

 周囲に睡眠時無呼吸症候群と思えるような人がいれば、ぜひ専門医の受診を勧めましょう。本人はあまり病識がないことが多いのです。
(文=新見正則/医学博士、医師)

新見正則/医師、新見正則医院院長

新見正則/医師、新見正則医院院長

外科専門医 /消化器病専門医 /消化器外科専門医 /消化器内視鏡専門医
慶應義塾大学医学部卒業後、外科医として研鑽を積む。大学病院や関連病院で診療にあたるほか、英・オックスフォード大学にて博士課程を修了。
新見正則医院 公式サイト

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