すると、「う~ん、あんまりつくり込んじゃうとお客さんが引いちゃうんだよね。最初は、出迎えのときも『おかえり』なんて言っていたんだけど、ドン引きされちゃったのよ(笑)」という説明があった。客側はそこまで母性を求めていないのか、キャストが徹底していないのか、その判別は残念ながら最後までつかなかった。
しかし、突っ込んで話を聞いてみると「子供の頃に母親がいなくなり、『母親とはどんなものか』を体験しにくる方もいる」「キャストを『ママ』と呼んでくる中高年男性もいる」ということが判明した。そこまで話を聞いて、「ちょっと、母親らしくしてみて」と要望してみたが、「そういった設定、面倒くさいやんか(笑)」とはぐらかされてしまった。
最後の「ご褒美タイム」の中身とは?
その後、施術はオイルマッサージに移行したが、会話は「実家に帰ってきた」というより「大阪の場末のスナックにやってきた」という感覚のほうが強い。キャストのハスキーボイスも、その雰囲気を助長した。
内容としては、「大阪のどこそこのたこ焼きがうまい」といった地元トークや「大阪に来たのなら、あそこは見るべき」という観光情報、キャストの子供がハマっているものまで多岐にわたった。
子供の話題になったときは母親らしい発言もチラホラ飛び出し、「母性を感じなかった」といえば嘘になるが、「母と子のロールプレイを体感できた」といえば、それもまた嘘になってしまう。だが、話が飛びに飛びまくる感じは“大阪のおかん”っぽいといえなくもない。
ちなみに、前述の「ご褒美タイム」は推察したような違法性のあるサービスではなく、気になった部分をもう一度もみ返してくれるというものだった。
結局、2時間で母性をしっかりと感じることができたのは、最後にシャワーを浴びる段になったとき。風呂場の外から「お風呂熱くない~?」と声をかけられた際に、「なんとなく実家っぽいな」と感じたくらいだった。
もしかしたら、筆者の期待が大きすぎたのかもしれないが、母親らしさを求めすぎると、ちょっと拍子抜けするかもしれない。だが、「大阪のおかんっぽさや実家っぽさを感じてリラックスしたい」という人や、「30~50代の女性とのふれあいを楽しみたい」という人は十分に満足できるだろう。
(文=中島鱧/ライター)