話題のベストセラー『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』。テレビ番組や雑誌などでも取り上げられ、「開脚」が注目を浴びている。
テレビ番組『嵐にしやがれ』(2016年12月17日放送)には、同書の著者でヨガインストラクターのEikoさんがゲスト出演。松本潤さんが、股関節をやわらかくする<開脚ストレッチ>に挑戦した。
また、『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(2016年12月16日放送)では、芸能人4人が1日3分のストレッチを1カ月間実践。全員が「おでこが床につく」レベルに達した。
Eikoさんによれば、体が柔らかくなることで代謝もアップし、痩せやすくなるという効果も期待できるという。リンパの流れが整い、冷え性やむくみが改善されたり、腰痛が和らいだという効果も紹介された。
同書は、累計販売100万部を突破したそうだ。「開脚」という古典的なエクササイズが注目された理由のひとつには、柔軟性を増していく自分の体に一種の達成を感じるからだろう。努力の成果が、「開脚」というわかりやすい物差しで確認できるのも大きい。
そして、「ベターッと開脚」というパフォーマンスは、周囲の羨望を集めるかもしれない。ちょっとした優越感、おまけにカラダにいいとあれば、チャレンジする人が増えても不思議ではない。開脚=ストレッチの運動習慣につながれば、体を動かすことが少ない現代人にとって有益なブームだといえる。
開脚が苦手な人のカラダには理由が3つある
ところが、見よう見まねでやみくもに行うのは慎重になったほうがいい。無理をすればケガにつながることもあるからだ。なかには、ストレッチを続けてもなかなか開脚をできない人もいるだろう。
そもそも、「ベターッと開脚」が苦手な人の体は、何が障害となっているのだろうか。それを知ることも、安全な開脚チャレンジにつながる。では、「ベターッと開脚」ができない理由を3つ挙げてみよう。
1.ふともも後ろの筋肉(ハムストリングス)の柔軟性が低い。
2.骨盤を前に倒すための骨盤周りの柔軟性が乏しい。
3.その動きをすることで痛みが出現する。
ハムストリングスの柔軟性
ハムストリングスは大きな筋肉だ。大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋という3つで形成されている。これらの筋肉が硬いと、骨盤を前に倒す動きが邪魔される。結果的として、前屈や開脚ができないことにつながる。多くの人の場合、「開脚ができない=ハムストリングスが硬い」というパターンだ。
骨盤を前に倒すための骨盤周りの柔軟性
前屈もしくは開脚をするためには、骨盤が前に倒れなければできない。ハムストリングスの柔らかさも必要だが、それに加えて骨盤周りの柔軟性もなければ、うまく骨盤を前に倒せない。
動きの際に痛みが出る
ハムストリングスや骨盤周りの柔軟性が向上しても、開脚にトライした際に痛みが生じたら無理をしないほうがいい。この痛みの原因はさまざまだ。
筋肉が伸ばされることで生じる痛みは、柔軟性が向上すれば解消される。だが、たとえば、膝の裏(膝窩部)が「ピーン」と突っ張ったり、足にシビレを感じたりするようであれば要注意。それは神経が伸ばされているかもしれないからだ。
神経組織が傷ついて麻痺につながることも
私たちの体には骨、筋肉だけではなく、さまざまなものが全身に張り巡らされている。その代表的なものは「血管」と「神経」だ。それらが体の隅々にまで延びていることで、私たちは体を自由自在に動かすことが可能なのである。
開脚のキーポイントになる骨盤から脚の裏にも、神経が通っている。「坐骨神経」と呼ばれる神経だ。この神経にトラブルがあると、いわゆる「坐骨神経痛」に苦しむことになる。ちなみに「坐骨神経痛」という病名は存在しない。
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前屈や開脚を行うと、脚の後ろは伸ばされる。まれに、その神経が伸ばされると痛みを感じる人がいる。神経が伸縮の刺激を受けると、「ピーン」としびれるような感覚や、実際に脚がシビレを生じたりする。
ところが、その状態から「ストレッチで筋肉が伸ばされているぞ」と思って頑張り、さらに無理して伸ばすと、最悪の場合、神経組織が傷ついてしまい麻痺などにつながってしまう。
筋肉の硬さは、日々のストレッチやトレーニングを行うことで改善していく。だが、神経が伸ばされることで起きている痛みには、むやみにストレッチを行うと逆効果で、むしろ悪化する可能性がある。構造上、神経は伸張しない。無理に伸ばそうとすると傷つく恐れがある。
神経が伸ばされることで起きる痛みには、一度医療機関を訪ねて、医師や理学療法士のアドバイスを受けるのが最善だ。せっかくのストレッチ習慣が、ケガにつながっては元も子もない。正しく安全に開脚にチャンレンジしてほしい。
(文=ヘルスプレス編集部、監修=三木貴弘)
※本稿は、「ヘルスプレス」にて、連載記事「“国民病”腰痛の8割以上はなぜ治らないのか」として掲載されたものです。