以前、筆者が労働問題に詳しい弁護士の方に話を聞いたところ、うつの症状が出たりつらい思いをしたりした場合、すぐに専門医院に通院して休暇を取得すべき、ということであった。
町沢メンタルクリニックに通院する患者さんは学生よりも社会人が多く、悩みの多くは上司との人間関係や過剰なノルマに関するものだという。また、近年メンタルクリニックが増えているのは、体だけではなく心の病で悩んでいる人が多いからだろう。5月病の自覚症状がある場合は、まずは身近な友達と話すか近隣のメンタルクリニックに通院することが改善の近道となりそうだ。
3割以上がパワハラ経験、「限界です」言う勇気
町沢メンタルクリニックの患者さんからは、5月に限らず「会社に行きたくない」「職場が変わって不安」「上司が怒ってばかりで、人間関係で悩んでいる」といった相談が多いという。
「5月病になってしまった人もそうですが、さまざまな悩みの渦中にいる人は、疲労が蓄積していることを自覚すべきです。自分では意識していないかもしれませんが、相談する時点でかなりお疲れになっているのです。周囲の協力も必要ですが、まずは自分がその疲労を軽くする努力をすることが大切です。
そのためには、自分をコントロールして体調を管理して生きていくことが大切です。自分の能力には限界があるので、完璧を求めるのはやめましょう。『汝自身を知れ』という言葉もありますが、自分で自分をコントロールして生きていくことで、心の病から解放されることが多いです」(同)
しかしながら、日本の会社は上司から部下に一方的に圧力がかけられることが多い。また、職場によっては独特の“空気”が支配しており、自分だけマイペースで仕事を進めるのは難しいという側面もあるだろう。そして、成果を挙げたりノルマを達成したりできなければ、さらに厳しい圧力をかけられたり、最悪の場合は退社を余儀なくされることすらあるのが現実だ。
「たとえば、上司からの注文が常にきつい場合は、一度上司としっかり話し合う必要があります。個々の能力には限界があるのですから、限界であれば『限界です』と言う勇気が大切です。また、上司のほうも、それを理解しなければ次々と部下が潰れ、そのうち部下がいなくなるということを理解すべきです」(同)
町沢氏の話を総合すると、メンタルを病まずに仕事で成果を挙げるには、まずは疲労を蓄積しないことが肝要だ。そして、疲労や精神的な重圧が限界に達してしまう前に、ギアチェンジしてスローペースで働くようにする。一方、上司の側からすれば、部下に軍隊方式のような働き方を強いていては、一時的には会社の成果は上がるかもしれないが、最終的には部下がどんどん潰れていくことになり、会社の生産性が下がってしまうということだ。