なぜ、ひし形の面積は「対角線×対角線÷2」?算数ができない子は補助線が引けない?
やみくもに「問題演習」する子
近年、中学入試における「科目」も様変わりしてきました。すでに一般化している「適性検査型入試」や「英語入試」「算数1教科入試」、最近では「プログラミング入試」や「レゴ入試」等を実施している学校も。多様な入試が増えてきたとはいえ、やはり入試の主体となるのは「算・国・理・社」4教科であることに変わりはありません。多くの中学受験生がこの4教科の学習を行っていることでしょう。
さて皆さん、その4教科の学習のスタート地点を思い出してほしいと思います(自分自身でもお子様でもお友達でもかまいません)。それぞれの科目において、どうも「算数」だけがその他の科目と異質なスタートを切っていなかったでしょうか? 国語における「本」、理科における「図鑑」、社会における「歴史マンガ」のように、興味・関心に基づいたスタートを切った科目がある一方で、算数だけが「問題集・ドリル」的なロケットスタートになっていなかったでしょうか。そんなスタートを切っているお子様方を見ていると、算数だけ学習内容の中に“苦痛”しか存在していないように感じられることも多々ありますね。
また、前回記事にしたような“手を動かす““図をかく”“理屈を理解する”といったことをじっくり行ってこずに、やみくもに「問題演習」量だけが多くなってしまったようで、問題にのぞんだ際“出たとこ勝負”になってしまっているお子様が多いように感じます。“公式に当てはめる”“見た目で解く”“(悪い)直感に頼る”といった方法では、特に「図形」の単元においては結果は望めませんよね。
“公式の意味を理解する”“求める考え方を知る”“(補助線等)をかく理由をつかむ”といった学習方法を取り入れて、“出たとこ勝負”にならない本当の意味で強い人になってほしいと思っています。
「公式」の意味を理解する・求める考え方を知る
図形の単元では様々な「公式」が出てきます。確かにその「公式」を覚えることは大切ですし、「公式」の暗記は基本となります。しかしながら、たんなる「公式」の丸暗記だけでは中学入試において対応できる問題は限られてしまいます。
以下のような「ひし形」を例にとって見てみましょう。
この「ひし形」の面積は“対角線×対角線÷2”という公式にあてはめて、4×8÷2=16(平方センチメートル)と求めることができます。ではなぜ“÷2”なんでしょうか? この“÷2”の意味は以下のような図をかくことで理解することができますね。
こういった意味の理解が、少し形が変わった際でもしっかり対応することができます。以下のような問題においても考え方は変わりませんね。
さらに発展させることができます。
「公式」を覚えるだけにとどまらず、その意味を理解することによって様々応用・発展させることができます。
実はこういった「公式」の意味理解の中には、さらに重要な“求める考え方を知る”といった要素が含まれています。上記のひし形等を求める問題においても、ひし形等の周りを長方形で“囲む”といった要素や、同じ面積の部分に“分割”するといった大切な考え方が含まれていますね。いずれにしても“図をかく”という「基本行動」をともなっていることは言うまでもありません。
(補助線等を)かく理由をつかむ
やみくもに「問題演習」をしてきてしまったり、“図をかく”ことを怠ってきてしまった場合、特に「補助線」を必要とする問題において、初動となる「基本行動」がともなわず全く求めるものに近づいていないことが多くあります。上記“分割”もその「補助線」の一つで、利用する際の“理由をつかむ”ことが大切ですね。
また引いた後の“基本の型”が備わっていないことで、結局「補助線」を引いたところで次の一歩を踏み出せないこともしばしば見受けられます(ある「補助線」を利用すると“基本の型”があらわれるのに、その“基本の型”が身についていないために、利用できずボーッと眺めている子も多いですね)。
次の問題を見てください。
当然このままでは求めることはできません。そこで「補助線」を利用して求められる状態にすることになりますが、まずは“おうぎ形の中心と結ぶ”がやみくもではない「基本行動」となりますね。これが第一段階となります。
どうでしょう。「補助線」を引くことの「基本行動」の型が身についているでしょうか。さらにこの第一段階がクリアできたとしても、次の段階として引いたことの理由がつかめているでしょうか。この「補助線」の意味は? そう“半径”を引いたのですよね。つまり等しい長さの直線を引いたことになります。
ここでもまた段階があります。確かに“半径(=等しい長さ)”が引けたものの、その意味は? そこで、今までの“基本の型”が身についているかどうかが問われます。以下のような“合同な三角形を導き出す”ということが“基本の型”の一つなんですよね。
最終的にはアとイの面積が等しいため、イの部分をアの部分へ“等積移動”することで、中心角30°のおうぎ形OABの2つ分として、12×12×3.14×1/12×2=75.36(平方センチメートル)と求めることができます。
このように、一つ一つの基本的な「行動」や「理由」を身につけつつ問題に取り組むことが大切ですね。やみくもに補助線引けばなんとかなるといった“出たとこ勝負”の演習では、安定した結果を得ることができません。“図形が苦手”となってしまっている人に限って、自分で図をかくことをおっくうがって、与えられた問題の図の中へ“やみくもに”線や数値を書き込んでいる様子が見受けられます。本当の意味で“安定した”“強い”人になるべく、上記のような取り組みを参考にしてほしいと思います。
(文=内田実人/中学受験指導スタジオキャンパス)