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一方で、人間ドックはちょっと違いますね。がんの疑いが見つかって、その後検査に回されて、異常なしとなることも少なくありません。実はがんではないのにがんの疑いを掛けられて、精密検査に回されて、最後は異常なしとなると、お金も時間も、そして精神的苦痛も生じます。最初から人間ドックにいかなければ起こらなかったことです。お金だけの問題ではすまされないことが起こりますね。
でも、あとからがんが見つかって、人間ドックを受けてもっと早く治療を始めていれば助かったかもしれないという後悔は、人間ドックを受けていればまったく生じませんね。僕とは違って後悔したくない人が、少しでも後悔しないためにワクチンを接種したり、人間ドックを受けることを僕はまったく否定しませんよ。それは性格の問題だからです」
常識君のコメントです。
「人は後悔するようにできているのです。ですから、一生懸命少しでもいいことを探して生きています。受験勉強も似ています。いい大学に行けば、よりよい人生が送れる可能性が高い。だから、中学生から、小学生から、いやいや幼稚園から受験勉強をしたほうが後悔しないというストーリーです。塾の広告などを見ると、『○○大学××人が合格』などと書いてあります。嘘のない事実ですばらしい成果です。
問題は、幸せな人生を送るための手段の一つが、よりよい大学進学と思われていることです。本当はその先の結果を知りたいのです。その後の人生をいかに幸せに送ったかを。でも幸せの尺度が明確ではない、そして何が幸せにたどり着く手段かわからないので、後悔しないためにこぞって大学受験競争に参加することが多いのでしょう。それが今できる後悔しない選択肢に思われているからです。医療と同じ構図ですね」
後悔しやすい性分の極論君と、後悔しない性格の非常識君の、妙に噛み合った会話でした。
(文=新見正則/医学博士、医師)
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