「物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなる」という病気である「窃盗症(クレプトマニア)」――。
これまで「万引き問題」は、「犯罪」と「刑罰」という視点でのみ捉えられることが多かった。しかし、これからは「疾患」と「治療」という医学的観点で取り扱うことも重要になってくるかもしれない。
大森榎本クリニックは、東京都内で唯一、クレプトマニアの専門外来が設けられている。そこではどのような治療が行われているのだろか。同クリニックの精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏に話を聞いた。
薬物依存症のプログラム「SMARPP」を参考に
「当クリニックで行っているのは、認知行動療法を中心としたワークブックを使ったプログラムです。12セッションで1クール(半年間)、内容は『再発の予測と防止』と『リスクマネジメント』が中心です」
そのプログラムで参考に用いたのが「SMARPP」。国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏が薬物依存症患者を対象に考案したプログラムだ(参考:薬物依存で<人里離れた施設に隔離>は古い?~街中でも治療可能な「SMARPP=スマープ」http://healthpress.jp/2016/11/smarpp.html)。
「当院のクレプトマニアの治療プログラムは、まず『万引きをする引き金』や『万引きのリスクや衝動への対処』などを具体的に検討します。最後に再発防止計画(リスクマネジメントプラン)をつくり、患者そしてその家族と共有します」(斉藤氏)
治療プログラムに加えて、患者にとって大きなメリットは「同じ問題を抱えた仲間が集う居場所がある」というとだ。「孤独」が引き金となって始まりやすいクレプトマニアにとって大切なことなのだ。
通院パターンは、週に6回もあれば3回、あるいは1回など再発リスクに応じてさまざまだが、通院という、習慣を変える行動そのものも治療のひとつに違いない。実はさまざまな依存症に共通する再発の2大リスクがある。