LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)への理解と配慮を進めることは、今日の社会における必須の課題となっている。
だが、実際の運用においては、まだまだ試行錯誤の手探りが続いているようだ。最近も、LGBTの問題への取り組みの課題について考えさせられるいくつかの出来事があった。
群馬県の東京福祉大では、LGBTの人が悩みを打ち明けられるサークル活動を行おうと、学生が大学に申請したところ、公認が認められなかったことが7月25日、明らかになった。
大学側は「秘密を口外されるおそれなど、リスクマネジメントの部分でまだ準備が不足している」とし、体制を整えて来年度以降再申請するように伝えたとのことだ。
大学とLGBTをめぐっては、2015年に一橋大学で、同級生にLINEで告白した男子学生が、ゲイであることを周囲に暴露されて自殺したという事件が起こっている。男子学生の両親が、同級生と大学を相手取って裁判を起こしたことで、この事件は世間に知られるようになった。
今回、東京福祉大でLGBTをめぐるサークルが不認可になったのは、この事件の記憶が影響しているかもしれない。
本人の十分な同意なく周囲に性同一性障害を暴露?
このように、LGBTの者が「自身が同意していない」のに、周囲に性的指向や性同一性障害であることなどを暴露されることを「アウティング」と言う。先日、日本精神神経学会が文部科学大臣宛に要望書を出したが、この内容もLGBTのアウティングに関するものだった。
文部科学省は2015年に「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細やかな対応等の実施について」という通知を出し、学校にLGBTに関する一層の配慮を求めている。
その通知の教職員向けの文書については、インターネットで見ることもできる。
参考:「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、 児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」
それによると、全国の学校から報告された「性同一性障害」に関する対応は606件。それらのケースの多くは、服装、トイレ、宿泊研修などで個別対応がなされていた。
そして、「約2割」の生徒が性同一障害であることを他の生徒に知らせた上で学校生活を過ごしていたのに対し、「約6割」の生徒は基本的に他の児童生徒には知らせていなかった。
この「周囲の児童に知らせる行為」が、性同一性障害の児童本人の十分な同意なく行われていることがあるのではないかというのが、今回の精神神経学会の要望書が表明している懸念だ。その文面は次のようなものだ。