コロナ禍で、ようやく日本でも外国人渡航者の入国が最重要リスクのひとつに認識されるようになった。だが、感染症対策にとどまり、治安対策までカバーされているとは言い難い。
すでに、米国では「ESTA(エスタ)」、カナダでは「eTA(イータ)」という渡航情報認証制度が運用されているが、欧州でもテロをはじめとする犯罪のリスクに備えて、同様の制度運用がスタートする。
当初は2020年導入予定だったが、2022年へETIAS導入の延期が発表された。
制度の名称は「ETIAS(エティアス)=European Travel Information and Authorisation System」。2018年9月5日に開かれた欧州連合(EU)理事会で制度創設が採択され、日本では「欧州渡航情報認証制度」と訳される。
ETIASの利用条件は「観光(90日以内)」「短期ビジネス(90日以内)」「対象国での乗り換え」に限定され、導入国への入国希望者は、入国前に「姓名」「国籍」「犯罪歴」「戦争地域・紛争地域への渡航歴」「伝染病」「疾患」「過去のオーバーステイの有無」など10項目について、ETIASセキュリティデータベースシステムで審査される。
ETIASセキュリティデータベースシステムは、欧州刑事記録情報システム、シェンゲン情報システム、ビザ情報システム、国際刑事警察機構、欧州刑事警察機構、不法移民の指紋照合システムに照合して、入国の可否を判断する。
ETIAS利用の手続きはオンライン申請で行い、申請フォームに上記の項目について回答し、審査を経て申請結果「承認」、「却下」または「保留」のいずれかがメールへ送信される。渡航許可は申請者のパスポートチップにオンラインでリンクされるので、許可証を携帯する必要はない。
ETIASを導入するのは、シェンゲン協定(出入国審査なしで国家間を移動できる協定)加盟国である次の26カ国だ。アイスランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、マルタ、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン。
シェンゲン協定加盟26カ国への入国に際して、90日以内の短期滞在はシェンゲンビザが必要だが、ETIASはシェンゲンビザと何が違うのだろうか。
有効期限は、シェンゲンビザの6カ月に対してETIASは3年で、複数回出入国ができ、最長90日間連続の滞在が可能である。申請方法は、シェンゲンビザは大使館での申請・面接だが、ETIASはオンラインで申請する。申請フォームへの入力時間はわずか数分にすぎない。取得までの期間は、シェンゲンビザは2~4週間を要するが、ETIASは入力や書類に不備がなければ即日メールで受け取ることができる。
ETIASの導入後は、シェンゲン加盟国への入国時にあらかじめETIASを申請して渡航許可を取得しなければならないが、一般的な旅行ならビザや追加の審査が不要になる。
こうしてみると、渡航者にとっては利便性の高いシステムと言えるだろうが、ETIASを取得すれば必ずしも無条件でシェンゲン協定加盟国に入国できるとは限らない。入国可否の最終判断を下すのは、到着空港の入国審査官である。
一方、ETIASの導入によって、シェンゲン協定加盟国に入国できるのは審査を通過した人物に限定される。加盟国だけでなく渡航者にとっても、安全性が格段に向上していくだろう。
(文=編集部)
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