南岸低気圧の影響により、今夜(23日)から明日(24日)にかけて東京都を含めた関東甲信で大雪・積雪となる予報が伝えられている。国土交通省は車の立ち往生や公共交通機関の乱れなどへの警戒を呼び掛けているが、停電の恐れも指摘されている。そこで今回は、イラストレーター・防災士の草野かおる氏の解説を掲載する。
「とにかく寒くて、風の音、雪が家を打つ音、ときどき何かがぶつかる音、街中も家の中も真っ暗で、やたら救急車の音が聞こえきて、怖かった~」
秋田在住の友人が停電を経験した感想です。今年の1月7日、秋田県内で約4万戸以上、新潟県内で1万戸という、大規模停電が発生しました。原因は、急速に発達した台風なみの爆弾低気圧による電線の断線です。友人は仏壇のろうそくを灯し、カセットコンロでの食事で暖をとって過ごしました。
電気は、生活の隅々まで使われています。エアコンや電気コタツはもちろん、石油ファンヒーター、ガスファンヒーターも、電気を使ったシステムなので使えません。マンションであれば、水道を屋上まで上げるポンプが稼働せず、断水になります。炊飯器、電子レンジ、IHならコンロも使用できません。
冷蔵庫が使えないということは、中の食品がダメになるということです。テレビが見られなくなり、携帯電話の電池切れで情報収集ができない状況になります。黒電話以外の家電話も使えません。給湯器も電気を使うシステムがほとんどなので、お湯も出ず、お風呂にも入れません。
電力会社の努力もあり、数日後には電気は復旧しました。しかし、電気が復旧しても、給湯機器が故障していて、お湯が出ないという事態に。故障の背景にあったのは「停電」と「凍結」という2つの要因でした。
寒冷地で使われている給湯器やボイラーには、凍結防止機能が備え付けられています。それが、長時間の停電により作動できず、配管が凍結し、破損、故障につながりました。高価な機械まるごと取り替えが必要になったケースもあります。同じような故障は多数発生し、修理会社では問い合わせの電話が鳴り止まなかったそうです。
給湯器やボイラーの凍結の予防策は、あるのでしょうか。
・配管を保温材で保護する。
・配管や設備を、風や冷気が当たらないように段ボールなどで覆う。
・事前に給湯器の水抜きを行うことで、凍結破損を防ぐ。
いずれも、機種によって予防策は異なってきます。詳しくはメーカーや販売店でご相談ください。
発電機で死亡事故
電気が使えない時、頼りになるのは「発電機」。ガソリン式発電機の排ガスには「一酸化炭素」が多く含まれます。発電機本体は必ず、外に置いて使いましょう。
秋田県内でも、発電機を屋内で使用し、一酸化炭素中毒で60代夫婦が死亡しています。発電機の使い方には注意が必要です。
また、石油ストーブやガスストーブ、練炭コンロなども、一酸化炭素中毒事故になるおそれがあります。必ず、定期的に換気をすることも忘れずに。
停電が復旧したあとの注意
停電が復旧したと同時に「通電火災」が発生するおそれがあります。停電中は電気機器のスイッチを切り、電気プラグをコンセントから抜いておきましょう。復旧後は周囲の安全を確認してから使用しましょう。
吹雪が収まった街のホームセンターでは「カセットコンロ」「石油ストーブ」「携帯充電器」「ランタン」「雪かきグッズ」などが軒並み完売。営業している「日帰り温泉施設」「持ち帰り弁当屋」「ファストフード店」が長蛇の列だったそうです。
私たちは、暴風雪、水害、台風、土砂災害、地震、すべての災害につながる「停電」に備えなければなりません。阪神淡路大震災は真冬の1月17日に発災していることを、忘れてはいけません。
(文=草野かおる/イラストレーター・防災士)