国立がん研究センターの研究でも有意差
またNeves氏は、糖尿病の男性患者でカフェイン摂取による有益性が認められなかった理由については不明としつつ、「心血管系のホルモンやホルモン以外の因子による生物学的な性差の影響が考えられるが、研究対象の男性患者数が有益性を検出するには不十分だったことによる可能性も否定できない」と説明している。
Neves氏によると、これまでの研究で糖尿病患者がコーヒーや紅茶を飲むとインスリン抵抗性が改善し、食後血糖値が良好に管理できる可能性が報告されており、これらの作用にはカフェイン含有飲料に含まれるミネラルやファイトケミカル(植物由来の化学物質)、抗酸化物質の関与が指摘されている。
いまや世界中の成人の8割以上がカフェインを摂取している現状からも、「カフェイン摂取による心血管疾患やがん、全死亡への影響を明らかにすることは重要な課題だ」と同氏はコメントしている。
学会で発表されたこの知見は、査読を受けた専門誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。しかし、コーヒーの摂取量と死亡率との関連性についての調査は、アメリカやヨーロッパで多数行われている――。
ヘルスプレスでも、すでにコーヒーの摂取量と死亡率との関連性については以下の記事で言及している。『コーヒーのカフェインが死亡リスクを低下~「カフェイン中毒」を避ける賢い飲み方は……』
7月11日、米国内科学会が発行している医学学術雑誌の電子版に「コーヒーを飲む量が多い人は、コーヒーをまったく飲まない人よりも全死亡率(原因を問わない死亡率)と消化器疾患死亡率が有意に低かった」という、国際がん研究機関の調査結果が掲載された。
デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、イギリスの10カ国の一般市民、45万1743人を対象に行われた大規模な調査だ。追跡年数は平均16.4年で、その間に対象者の4万1693人が死亡している。
調査の結果、コーヒーをまったく飲まない人に比べ、コーヒーをよく飲んでいる人の全死亡率のリスクは有意に低かった。また、コーヒーの摂取量が増えると、消化器疾患による死亡のリスクが低減していた。女性については、コーヒーの摂取で、循環器疾患・脳血管疾患による死亡のリスクが減っていた。
また、日本でも、国立がん研究センターが<習慣的コーヒー摂取>と全死亡・主要死因死亡との関連を調べている。結果として、コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは、まったく飲まない人に比べて24%低いことがわかった。さらに、飲む量が増えるほど危険度が下がる傾向が、統計学的有意に認められた。
どうしてコーヒーを摂取すると、死亡リスクの低下が見られたのか。国立がん研究センターの研究グループは次のように考察している。
①コーヒーに含まれるクロロゲン酸が血糖値を改善し、血圧を調整する効果がある上に、抗炎症作用があるといわれている
②コーヒーに含まれるカフェインが血管内皮の機能を改善する効果があるとされている
③カフェインには気管支拡張作用があり、呼吸器機能の改善効果があるのではないかといわれている
このような考察から、カフェインの薬理作用が死亡リスクの低下に役立っていると推測できる。
もちろん飲みすぎた場合はカフェイン中毒という極端な例はあるが、日常生活でのコーヒーは、どうやら死亡率を下げる可能性があるようだ。
(文=ヘルスプレス編集部)