冬を代表する味覚「焼き芋」。かつてはトラックやリヤカーでの移動販売がメインだったが、今ではスーパーやコンビニなどの小売店でも、店内で焼き上げた焼き芋が売られるようになってきている。
気軽に買えるようになった焼き芋だが、芋の品種以外にも、店ごとの味の違いは意外と大きい。今回は5社の焼き芋を実食し、食感や甘さなどを比較・検証してみた(価格は税込み、甘さは5段階評価)。
イオン
品種:紅優甘
価格:213円
食感:ねっとりとほくほくの中間
甘さ:3
その他の販売品種:安納芋(267円)、シルクスイート(267円)、紅あずま(192円)
5品の中で、糖度、食感ともに最もバランスが取れていると感じたのが、イオンの焼き芋だ。今回は紅優甘をチョイスしたが、なめらかな食感が特徴の安納芋とシルクスイート、ほくほく系の紅あずまなど、ラインナップも幅広い。販売する品種は店舗や日時によって異なるという。
イオンの「紅優甘」は持ってみるとしっかりした感触なので「ほくほく系」かと思いきや、ところどころでねっとりとした食感も味わえる。まさに、1本で二度おいしい焼き芋だ。糖度も甘すぎず芋感もあり、バターなどをつけてもマッチするだろう。香ばしい皮も、さつまいもの甘さにアクセントを与えている。
イオンの焼き芋売り場では、焼き上がりの目安時間を記載してアナウンスしてくれる店舗も多いため、焼きたてを狙って買うことも可能。ただし、常にすべての品種が売られているわけではないので、お目当ての品種がないこともある。
マルエツ
品種:シルクスイート
価格:170円
食感:ねっとり(粘質系)
甘さ:4
その他の販売品種:安納芋(213円)、紅優甘(192円)、紅はるか(181円)
関東で300店舗近くを展開するマルエツでは、冬季に限らず年間を通して焼き芋を店頭販売している。今回は2店舗に足を運んだが、販売品種が多く、店員によると「店舗や日、時間帯、シーズンによって、取り扱う品種を変えている」という。
今回は他のスーパーでは見かけなかった「シルクスイート」という品種をチョイスした。一口噛むと歯にくっつくほど濃厚な味わいで、甘さが非常に強い。食感、糖度ともに干し芋のようだ。蜜の量が多く、皮を剥くのは少し大変だった。
マルエツもイオンも、焼き芋売り場でお目当ての商品を選び、レジへ持っていくという販売形式だ。しかし、両店舗とも品種を見分けるポイントは紙袋の違いのみだという。もし「お目当ての芋がどれかわからない」という場合は、近くの店員に尋ねると安心だ。
オオゼキ
品種:紅天使
価格:321円
食感:とてもねっとり(粘質系)
甘さ:5
その他の販売品種:なし
東京都と神奈川県に店舗を展開する地域密着型スーパーのオオゼキで販売されている焼き芋は、茨城県の「ポテトかいつか」というさつまいも専門会社のブランド芋「紅天使」を使用している。ポテトかいつかは移動販売がメインの「ほくほく山KAITSUKA」というブランドを展開しており、オオゼキでは常設されているのだ。
売り場の機械から商品を取り出すと、ふにゃふにゃした感触でベタつきもあり、袋に入っていても蜜の多さとやわらかさが感じられる。手で半分に割ることすら難しいほどやわらかく、まるでクリーミーなスイートポテトのようだ。甘味は強いが、自然な甘さなので食べやすい上品な味わいになっている。焼き芋にしてはいささか値が張るが、1本が大きいのでそれほど割高という感じもない。
現在、ほくほく山KAITSUKAは全国へ販路を広げている。公式サイトで取り扱い店舗を確認できるので、近場にあればぜひ食べてみてほしい。
ドン・キホーテ
品種:紅はるか
価格:181円(店舗によって異なる)
食感:ほくほく(粉質系)
甘さ:2
その他の販売品種:なし
ドン・キホーテの店内で甘く漂う焼き芋の香りを嗅いだことがある人は多いだろう。近年、ドン・キホーテでは焼き芋を通年販売する店舗が増えてきている。しかも、ほとんどの店舗が24時間営業の上、高知県を除く46都道府県に出店していることから、“いつでもどこでも焼き芋が買える店”と言っても過言ではない。
品種は「紅はるか」のみだ。一般的に紅はるかはねっとりとした食感と言われているが、ドン・キホーテの焼き芋はほくほくとしている。遠赤外線でじんわり加熱する方法が、堅めの食感につながっているのかもしれない。
購入した時間帯や店舗の差もあるだろうが、ドン・キホーテの焼き芋は芯が残っているものが多かった。控えめな甘さや筋の多さも相まって蒸かし芋のように感じるが、サイズは大きめなので満足感はある。
ローソンストア100
品種:紅あずま(店舗によっては紅はるかの場合もある)
価格:108円
食感:ほくほく(粉質系)
甘さ:2
その他の販売品種:安納芋(216円)
ローソングループの中で100円均一商品を豊富に取り扱う「ローソンストア100」。スーパーと違い、店内で焼き上げた焼き芋を販売しているコンビニは数少なく、貴重な存在だ。
ローソンストア100の焼き芋の最大の魅力は、その安さ。1本108円という安さは、今回検証した5つの中でもダントツだ。大きさは値段相応だが、おやつや軽食として食べるのであれば、十分なサイズといえる。子どもや女性、少食の人でも食べ切れる量なので、「大きな焼き芋だと残してしまいそう……」という人にもおすすめだ。味や食感は蒸かし芋っぽく、どこかなつかしさも感じられる。
ドン・キホーテの焼き芋同様、糖度はそれほど高くない上、ほくほくとした食感も手伝って、料理やスイーツに使う食材としても最適。この焼き芋をベースにサラダやスイートポテトなどにアレンジすれば、時短調理も叶うだろう。
焼き芋は、同店舗、同時間帯、同品種であっても、さつまいもの大きさ、機械のどこに置いて加熱するかなどにより、甘さや食感に違いが生じる。今回取り上げた商品も、条件が変われば違った味わいになる可能性が高い。そのため、必ずしも今回の評価通りではない場合もあるが、その「当たり・はずれ」も焼き芋を選ぶ楽しさと考えてみてはいかがだろうか。
(文=清談社)