日本が世界に誇る機械遺産「マッサージチェア」の発明から63年!
マッサージチェア(マッサージ器)のルーツは日本の大阪だ。モミ玉からハイテクへ。そのモミモミ史を駆け足で見よう。
1954(昭和29)年、フジ医療器の創業者・藤本信夫は、世界初の量産マシンとなる「フジ自動マッサージ機」を発明。2014年に日本機械学会の「機械遺産(Mechanical Engineering Heritage)」No.68に認定されている。
フジ医療器の発明秘話によれば、戦後復興期のさなか、初期の試作品は、ゴミの山から寄せ集めた木材、野球の軟式ボール、自転車のチェーン、車のハンドルなどを組み立て、試行錯誤の末に、第1号機がようやく日の目を見た。3分10円のコイン式に改造し、銭湯に売り込んだところ、全国に大ブレイクした。そのスペックは、幅710×奥行き870×高さ1300mm、重量64kg、木製、もみ玉材質ウレタン。フジ医療器の大阪工場で保管されている(非公開)。
この初期のマッサージチェアは、背もたれから2本の金属棒に付いたモミ玉が規則的に前後に動くだけの単純な電動式だった。その後、モミ+タタキ、リモートコントローラ、モミ玉の自動昇降、自動コース、お好みコース、電動リクライニング、肩位置自動調整、圧力検知、エアバッグ、求心法や遠心法の採用、リラックス・緊張の制御、メディカルプログラム搭載などの多種多彩な機能が次々と加わり、グッドデザイン賞を受賞するような秀逸なデザインアイテムも増えた。
当初は、温泉、銭湯などの利用客向けだった。現在は、ホテル・旅館の客室から、家庭、インターネットカフェ、カラオケボックス、パチンコ店、スポーツクラブ、空港、長距離フェリー、企業の福利厚生用まで浸透。世帯普及率は、およそ15%と見られる。
国内メーカーは、フジ医療器、ファミリーイナダ、オムロンヘルスケア、パナソニックヘルスケア、大東電機工業(スライヴ)など。Gfkジャパンの調査では、2009年1月~2011年2月のシェアはフジ医療器が38.9%でトップ。
なお、電動式のマッサージチェアは、医薬品医療機器等法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の「医療機器(クラスII)」に当たる。
単なる「按捏(あんねつ:モミ)」「叩打(こうだ:タタキ)」から「圧迫(指圧)」「把握(つかみ)」「軽擦(サスリ)」まで。マッサージ天国は、昇りつめるところまで昇ったのだろうか。はたまた、モミモミの達人芸を見せつけるロボットマッサージ師たちが癒しの境地を制覇する日が迫っているのだろうか。
(文=ヘルスプレス編集部)