「海外に比べて日本は●●がダメだ」という言説はよく見かけるし、受けがいい。いわく、日本人は排他的ですぐイジメに走る、政治に関心がない、男尊女卑が激しい……。
しかし、本当にそうだろうか。
私はイギリスに合計6年ほど住んでいた日本人だ。幼稚園のころに数カ月、中高生活で4年、そして成人してから2年。理由はバラバラだが、年代を超えて滞在できたおかげで教育、政治、納税の仕組みなど幅広い体験をさせてもらえた。
そして親族がイギリスに永住していることから、そのまま進学や就職活動をする選択肢も持っていた。そのうえで、私は日本へ戻ってくることを選んだ。それも愛国心からではない。純粋に機能面で日本が優れていると思ったから住んでいる。今回はメディアに「海外に住んだけれど、日本に住むことを選んだ日本人」の話も提供することで、「日本はダメだ」論とのバランスが取れればと願う。
日本はサービスを提供する側にとって「のみ」地獄
海外に長く住んでいる方が批判するのが、「日本は労働者にとっては地獄」だ、という点である。確かにそうかもしれない。イギリスではパートの店員が笑顔で接客なんてする義務はない。ガムをくっちゃくっちゃ噛みながらレジ打ち対応されるのも当たり前の光景だ。
一方、サービスを受ける側として、これ以上ありがたい国はない。どんなお店でも笑顔で接客してもらえる。無茶ぶりとしか思えない要望すら時には聞いていただける。「お礼に……」とチップを渡そうにも全力でお断りされる。原稿締切直前のバイク便、トイレットペーパーが無くて駆け込んだ24時間営業のコンビニエンスストア、泣いている友と入った午前3時の居酒屋。これらはすべて、日本でなくては実現しないシチュエーションだろう。
日本はサービスを提供する側にとっては地獄だろうし、享受する側にとっては天国である。だから日本に住むなら、メリットとデメリット、両方を味わい相殺されることとなる。さらに言ってしまうと、海外から仕事を受注して日本に住めば、日本では「サービスの受け手」としてメリットだけを享受できる。
政治に対する関心の低さ、男尊女卑はどこにでもある
次に多い「日本の若者は政治に関心が低い」という発言も、国際比較ではそこまで差がないことがわかっている。若年層の投票率は確かに低いが、それは政治への関心の低さではなく「どうせ若い世代が投票しても、シニアの投票数にはかなわない」という世代間人口の差に起因するのではないか。