週に1~3缶のビールはがんリスクを下げる?
ビールに痛みを抑える成分が含まれているとはいっても、その量はごくわずかなので、ビールをいくら飲んでも痛み止めにはなりません。お酒の有益性については、最近、北アイルランドのクイーンズ大学が、生涯飲酒量とがん発生率、死亡リスクとの関係に関する大規模な追跡研究を行い、「週にビール1~3缶程度の少量飲酒はそれらのリスクを下げる」と発表しました。
過去数十年の研究において、多くの研究者が「適度の飲酒は心臓病や脳梗塞で死亡するリスクを下げる」という実験結果を報告しています。アルコールは善玉コレステロール(HDL)を増やし、さらに血管の内側に脂肪などが固着して詰まってしまう原因となる血栓を形成する凝固因子を減らす効果があることがわかっています。
ビールには明るい黄色や茶色など、いろいろな色がありますが、特に黒いビールにはフェノール性抗酸化物質が多く含まれていて、より健康に良いといわれています。赤ワインに含まれるレスベラトロールには炎症を抑える作用があり、それが細胞の老化や疾患の発症を抑制するといわれていますが、それと同じ仕組みです。
摂取するとエネルギー源として利用されるアルコールは、豊富な栄養分を含んでいます。適量の飲酒は、前述した医薬品のような作用のほか、気分を高揚させるといった作用もありますが、飲みすぎると感情の抑制が麻痺したり思考が鈍ったりします。ビールに関する健康作用には科学的な根拠に乏しいものもあるため、そのような情報に惑わされずに適量飲酒を心がけたいものです。
(文=中西貴之/宇部興産株式会社 品質統括部)
【参考資料】
「サントリー ホームページ」
「ビールの苦味成分が手足の痛みや痺れ、腹痛を抑制することを発見 糖尿病合併症や抗がん剤の副作用等、従来の鎮痛薬が効かない痛みにも効果」(学校法人近畿大学)
『食べ物はこうして血となり肉となる~ちょっと意外な体の中の食物動態~』 野菜を食べると体によい。牛肉を食べると力が出る。食べ物を食べるだけで健康に影響を及ぼし気分にまで作用する。なんの変哲もない食べ物になぜそんなことができるのか? そんな不思議に迫るべく食べ物の体内動態をちょっと覗いてみよう。