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山田まさる「一緒に考えよう! 超PR的マーケティング講座」

屋内の熱中症死亡、7割がエアコン非使用…今こそ空調業界は「絡んでなんぼのPR」を

文=山田まさる/インテグレートCOO、コムデックス代表取締役社長

 記事タイトルの通り、今回はPRの話である。

「絡む(からむ)」

 この言葉、もともとは「まとわりつく」とか、「いいがかりをつける」とか、あんまりいい意味では使われない言葉だったように思うのだが、いつの頃からかテレビで芸人さんたちが、相方や共演者を「絡みやすい」「絡みづらい」と評したところから、コミュニケーションの取りやすさ・親しみやすさを評する言葉として、便利に使われるようになってきた。「絡みづらいわ~」と関西弁で冗談っぽく表現できるのがいいところなのだろう。

 インターネットで関連ワードを検索すると、「絡みづらいと言われてしまうアナタの特徴4つ」「マジで絡みづらい!と男性が悶絶する不思議ちゃん9パターン」などと、もはや「絡む」は、良好な人間関係や恋愛成就の秘訣のようだ。これは企業にも当てはまる話だろう。

屋内の熱中症死亡、7割がエアコン非使用…今こそ空調業界は「絡んでなんぼのPR」をの画像1ニクレンジャー(出典:吉野家の公式ツイッターアカウント)

 最近ツイッターで話題になった、外食企業、特にお肉にかかわる5社が作・演出した「ニクレンジャー」。「外食産業は競合ではなく、共創しながら盛り上げていきたい」という思いから吉野家が声をあげた企画だ。呼びかけにまずガストが応え、ケンタッキーフライドチキンが乗っかり、続いてモスバーガー、最後は発起人の競合である松屋までが加わった。かくして、外食戦隊「ニクレンジャー」が出来上がったというお話。各社のSNS担当、いわゆる中の人が企画したPRなのだが、PRとは、パブリック(公)とのリレーションズ(関係構築)であり、絡んでなんぼの世界である。まさに、そのことがよくわかる好例だろう。

「これで売れたの?」とか「店頭での刈り取りは?」などと、無粋な突っ込みを入れる必要はない。ツイッターという場に限って、評判と好感を獲得することに的を絞り、アイデア勝負でチャレンジしてみた。その成果としては十分ではないだろうか。

 このニクレンジャーは、企業が積極的に短期的に絡んだ事例だとすれば、逆に、もう少し長い目で見て、広く世の中と絡んでいくケースについても考えてみたい。

エアコンのつけっぱなし運転は理にかなっている?

 今年は、観測史上の記録を塗り替える猛暑である。8月5日までに熱中症で救急搬送された方の数は7万1,266人で、2017年合計の5万2,984人をすでに大きく上回っている。気象庁は熱中症予防の対策として、水分や塩分の補給、エアコンの適切な利用を呼び掛けている。

 しかし、東京都福祉保健局の発表した昨夏のデータによると、熱中症により屋内で亡くなった方の71%がエアコンを使用していなかったそうだ。特に高齢者は、エアコンなんて贅沢、使わなくても私は平気と本気で思いこんでいらっしゃる方がいると聞く。エアコンは贅沢品ではない、いまや身を守るインフラである。このような方々、特に高齢者へ向けて、空調業界全体でエアコンの利用を呼びかけてはどうだろうか。

屋内の熱中症死亡、7割がエアコン非使用…今こそ空調業界は「絡んでなんぼのPR」をの画像2

 というのも、筆者自身が長年お付き合いしている空調メーカーのダイキン工業、以前もこのコラムで「金鳥とダイキンと日本の夏」というテーマで取り上げたが、2016年にダイキン工業はエアコンの電気代に関する実証実験を行っている。「つけっぱなし運転」と「小まめに入り切り運転」のどちらが、どのくらい電気代を消費するのかという疑問を解消するためのものだ。その結果では、条件つきながら「つけっぱなし運転」のほうが電気の消費量が大きいことがわかった。ただし、その差は数十円であった。

 この実験では、運転方法にかかわらず、最近のエアコンでは1日当たりの電気代がそれほど高くないという事実も明らかにしている。この結果からも、熱帯夜を含め、屋内での熱中症予防のためにつけっぱなし運転を行うことは、理にかなっているということがいえるだろう。高齢者のみならず、夏場の電気代を気にされる方は多いはず。一度、その事情を客観的に明らかにしてみる価値はありそうだ。

社会との関係を考慮した「絡み方」

 夏場はダイキンをはじめ、エアコンメーカー各社にさまざまな問い合わせが入っているはずだ。たとえば2011年の夏、あの東日本大震災後、世の中は節電を求めていた。電力を消費することは悪であった。この年、ダイキン工業は、お客様相談センター、ビルメンテナンスのサービス部員などを大幅に増員して、徹底した節電サービス体制を組み、節電をガイドする特設ページを開設した。これは短期的なプロモーションを超えて、社会との関係を考慮した絡み方だったといえる。

 これまでエアコンの夏のテーマは、「快適」と「節電」であった。だが、記録的な酷暑によって様相が変わった。関連企業や業界には、その場面ごとの役割に応じて、さまざまな引き出しからメッセージを届ける姿勢が求められる。そういった柔軟性が、絡み上手な企業(好感がもてる、信頼できる)という認識につながっていくのではないだろうか。

 PRとは、パブリック(公)とのリレーションズ(関係構築)。だから、絡んでなんぼの世界なのである。いや、個人でも企業でも、現代の情報社会を生き抜くためには、さまざまな利害関係者(ステークホルダー)と絡まざるを得ないのだ。ならば、上手に絡んでいきましょう!ということだ。ニクレンジャーのように短期的に、ウィットに富んだアイデアで絡むもよし。一方で、世の中の動向を見極めて、責任を果たすために、企業として絡むべきときもある。
(文=山田まさる/インテグレートCOO、コムデックス代表取締役社長)

山田まさる

山田まさる

株式会社インテグレートCOO、株式会社コムデックス代表取締役社長

1965年 大阪府生まれ。1988年 早稲田大学第一文学部卒業。1992年 株式会社コムデックス入社。1997年 常務取締役、2002年 取締役副社長就任。2003年 藤田康人(現・株式会社インテグレートCEO)とB2B2C戦略の立案に着手。2005年 食物繊維の新コンセプト「ファイバー・デトックス」を仕掛け、第2次ファイバー・ブームを巻き起こした。同キャンペーンは、日本PRアワードグランプリ・キャンペーン部門賞を受賞。2007年5月、IMC(Integrated Marketing Communication)を実践する日本初のプランニングブティックとして、株式会社インテグレートを設立、COOに就任。2008年 株式会社コムデックス 代表取締役社長に就任。同年「魚鱗癬」啓発活動にて日本PRアワードグランプリ・日常広報部門最優秀賞受賞。著書に『スープを売りたければ、パンを売れ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『統合知~“ややこしい問題”を解決するためのコミュニケーション~』(講談社)、『脱広告・超PR』(ダイヤモンド社)がある。


株式会社インテグレート

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