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山本康博「なぜあの商品はヒットしたのか/しないのか」

上あごに貼り付く喉トローチ「ピタス」がブーム…会議中や接客中でもバレないと好評

文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役

 昨年10月頃からドラッグストアやコンビニエンスストアで売られている、上あごに貼り付くトローチピタス」がインターネット上で密かなブームになっているようだ。インフルエンザが猛威を振るっている今冬は特に、喉の炎症や殺菌に気をつけなければならないが、普通のトローチでは仕事中や話している最中に口に入れているのは相手に失礼になるため、上あごに貼り付いて10分から20分ほど口の中でゆっくりと有効成分が溶け出して喉の炎症を抑え、殺菌をしてくれたり、はれを抑えてくれるのは非常にありがたい。さらに、指定医薬部外品なのパッケージデザインがとってもオシャレで、財布や手帳に挟んで持ち歩けることも素晴らしい。

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 ネット上のコメントを見てみると、特に接客業の人々の間で口コミで広がっているようだ。開発したのは、チオビタドリンクで有名な製薬メーカー、大鵬薬品なので安心して使用できる。

使用してみた感想

 筆者もコンビニで買って試してみたが、まずパッケージがオシャレなので買いやすい。包装を開けてみると、アルミパックに入れられたトローチが3つに切り取れるようになっていて、それぞれに直径約1.5cm、円形で半透明なピンク色のトローチが入っている。ひとつずつ切りはなせるので、財布などにも手軽に入れられそうだ。また、アルミ包装には可愛く「PITAS」とピンクのロゴが並んで印刷されていて、Aの文字がハートマークだったりとなかなか消費者を喜ばせてくれる工夫がされていて、開発者の遊び心がうかがえる。

 袋から出した円形のトローチは、一度舌の先端にのせてから、上あごにペタッとくっつける。非常に簡単で誰でもできるだろう。また、上あごにつけたら何もせずに普通にしゃべることができ、違和感のない快適なつけ心地でとても良い。味はピーチ風味なので口の中に桃の香りがして、気分も良くなる。持続時間も15分程度なので、ゆっくりと成分が溶け出して喉のイガイガがなくなった。ちなみに眠くなる成分が入っていないため、昼でも服用できるようだ。

とっても簡単、使い方説明

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マーケティングの視点から分析

 この商品はマーケティング的にいうならば、企業が考え、つくり出した商品を店頭で並べて売るという姿勢ではなく、顧客ですら気がついていない不満ニーズを汲み取って解決策を提示したという意味で、「デザインマーケティング」発想から生まれた商品だといえる。最近ではテレビCMも見かけるようになってきたが、あえて大々的にプッシュ戦略をとらず、じわじわと口コミを狙って広げていくという戦略は成功していると感じる。

山本康博

山本康博

ビジネス・バリュー・クリエイションズ
代表取締役、損保ジャパン顧問。ブランドマーケッター。日本コカ・コーラ、日本たばこ産業、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本制作。1年以上継続した商品は計算すると3割以上、メーカー側でマーケティング実績35年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や寄稿、企業研修、大学等でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、2016年スタンフォード大学 David Bradford 名誉教授、ボストンカレッジ Allan Cohen 教授の推薦書として、世界に向けて英著、 “Stick Out”a ninja in Japanese brand marketingを全世界同時発売開始。『Stick Out~a ninja marketer』(BVC)、現在ブレイク中で話題のAmazon書籍総合1位も獲得したベストセラー『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版)の一人として8月1日執筆など。

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