コンドームメーカーの相模ゴム工業が2013年に発表した、性に関する日本で最大規模の調査「ニッポンのセックス」。セックスの平均回数や経験人数などをはじめ、セックスに関するあらゆる内容を調査した結果が話題になった。今年2月、実に5年ぶりとなる「18年版」が発表され、あらためて現代人のセックスや性意識の変化を浮き彫りにしている。
しかし、そもそもこの調査はなぜ始まり、どのように行っているのだろうか。相模ゴム工業営業企画室の山下博司氏に話を聞いた。
「草食化」「セックスレス」の真偽を追求
13年版では「20代男性の40.6%が未経験」という調査結果が発表され、大きな話題となった。そもそも、なぜコンドームメーカーの相模ゴム工業が、このような調査を行うことになったのだろうか。
「『草食系男子』や『肉食系女子』『セックスレス』といった言葉がニュースに取り上げられ、今の日本人のセックスや性事情はどうなっているのかを徹底的に調査してみようと考えたのが始まりでした」(山下氏)
このような性に関する実態調査は、大小、国内外を問わず多くある。「ニッポンのセックス」は、どのように差別化を図っているのだろうか。
「まず、調査人数1万4100人から得た結果ということで、日本で行われたセックス調査としては最大級のものです。また、我々が行っている調査は『ニッポンのセックス』であるため、海外性事情との比較的な調査ではなく、日本人の性に関する調査という点が特徴だと思います」(同)
あくまでも、日本のセックス事情の現在を調査しているということだ。ただ、山下氏いわく「当社のプロモーションに結びつけることは考えていない」とのこと。つまり、純粋に日本のセックスの現状を把握するための調査という位置づけである。
練りに練った質問でセックス事情を明らかに
調査にかけた金額は「お話しできない」とのこと。しかし、これだけの規模の調査を行うには多額の費用がかかっていることが予想される。現状の把握のみに努め、商品開発の目的でもない調査を行うことに、社内で反対はなかったのだろうか。
「販売に結びつけるための調査に関しては、別途行っています。また、我々はコンドームを主として販売しているメーカーですから、セックスが行われない環境が進行しているのであれば生き残っていくことができません。コンドームメーカーとしてはしっかり現状を把握しておく必要性があるため、社内に反対する人はいなかったと思います」(同)
同調査は18年10月25日~11月5日の期間に、インターネットを使って全国20~60代の男女合わせて1万4100人を対象に行われた。この調査方法について、山下氏はこう語る。
「社外秘なので、ホームページに記載されていること以外はお話しできません。今回は、5年前との比較ができるように同じ質問内容にしています。しかし、当時は質問内容を考えるのは苦労したと聞いています。どんな質問をすれば現状のセックスを明らかにできるのかを、何度も話し合ったとのことです」(同)
練りに練った質問項目から得られた回答。その結果を知ったとき、社内はどのような反応だったのだろうか。
「13年版では、調査中から、『20代男性の40.6%は未経験』という一方で、『セックス未経験者男性の70.4%はセックスをしたい』と回答しているなど、興味深いデータが出てきました。表面上は『草食化』といわれていても、実際に調査すると、高い割合でセックスへの興味があった。このような結果から、一定程度の現状把握という目的は達成できたと思っています」(同)
“極薄”だけではない商品開発を目指す
18年版でも、「セックス経験者の1カ月の平均セックス回数は2.1回」「初体験の平均年齢は20.3歳 男性は20.5歳、女性は20.1歳」「20代男性の34.1%がセックス未経験 20代女性は20.9%が未経験」「結婚相手または交際相手とセックスレスだと思う 53.6%。 男性は57.9%、女性は50.0%」「最も浮気率の高い都道府県は埼玉県」など、興味深い調査結果が得られた。これらのデータから我々に訴求したいことは、なんなのだろうか。
「この調査は一貫して調査結果のみを淡々と公開し、メーカー側のコメントは一切掲載していません。というのは、この調査結果をさまざまな立場の方々がご覧になり、どのように感じたかが大事だと考えているからです。我々メーカーがみなさんのセックスについて、あれこれ口を出す権利はありません。みなさんのセックスに合わせて、そこで求められていることを最大限に高めるのが我々メーカーの使命だと思っています」(同)
調査結果からうかがえる性生活に異を唱えず、現実に対応していくのが相模ゴム工業のスタンスということだ。しかし、その現実は、少子高齢化やセックスレスなど、コンドームメーカーとしては厳しい要素も少なくない。
「コンドームメーカーにとっては逆風が吹いており、今後も当面はこのような状況が続いていくと思われます。ただ、その中で13年に発売された『0.01ミリ』という薄物コンドームに対する興味・関心は非常に高いものであったと感じています。この薄物コンドームは、着けていない状態に近づけるという方向性の商品ですが、薄くすることだけが使用感を良くするアプローチではないので、今後は異なった角度の商品開発を目指していきたいと思います」(同)
「ニッポンのセックス」の貴重な調査結果を話のタネにするだけでなく、自分がどんなセックスを目指せばいいのかを考えるきっかけにしてみてはいかがだろうか。
(文=沼澤典史/清談社)