8月に、あるTwitterユーザーが呟いた投稿が話題を呼んでいた。豆腐屋に「冷奴の薬味は何が一番美味いんだ?」と聞いたところ「(豆腐)一丁に味の素を二振り。これが豆腐に無い旨味を足せて一番美味い」という回答を得たというのだ。
「味の素」といえば、うま味調味料界ナンバーワンの知名度を誇るといっても過言ではない、味の素の看板商品。料理の味をぐっと深めてくれる同商品だが、冷奴にかけるという発想の意外さからか、SNS上では「いい情報を聞いた」と驚きと好意的な反応が相次いでいた。
また、引用リツイートやリプライには「冷奴+味の素にプラスアルファすると美味しいのでは」と、さまざまな薬味の組み合わせ案も寄せられており、大きな賑わいを見せてもいた。
そこで今回は、話題の「味の素+冷奴」、そしてこれにちょい足しすると良いと評判の薬味を3品選出。実際につくって実食レビューしていきたい。
「冷奴+味の素」:豆腐屋が教えるシンプル イズ ベストな渋い味
まずは、ベースとなる「冷奴+味の素」を実食してみよう。
用意するのは当然、一般的な「絹ごしの冷奴(一丁)」と「味の素」のみ。塩気となる調味料もなく、あまりにもシンプルで正直不安すら覚える。
冷奴といわれて多くの人がイメージするのは醤油を数回、回しかけたものだろうが、それすら省いてしまうこの大胆なプレーンさ。だが、これこそ豆腐屋がこっそり教える究極の調味料ということなのだろうか。
さっそく冷奴に「味の素」を2振り。豆腐の大きさに対して少なすぎる気もするが、果たして……。
「味の素」を2振りしても、見た目にはほとんどわからないだろう。期待と不安を胸に一口いただいてみた。食べてみるとその見事なバランスに驚かされる。率直な感想は「ちゃんと味がする」だった。豆腐の淡白かつ豊かな大豆の香りを、味の素の旨味が包み込んでいる。
素材の味をしっかりと感じさせつつも、まるで繊細な「だし」をかけたかのような味わいに仕上がっており、これだけでも十分完成された料理に思える。通な酒飲みほど試してほしい究極の冷奴かもしれない。
「ネギとごま油」:シャキシャキ食感のネギとごま油で韓国風に?
ここからは、リプライなどで寄せられた薬味ちょい足しレシピを実践していく。
まずは「ネギとごま油」のちょい足し。正確には、ごま油のみのちょい足しがSNSでは寄せられていたのだが、調べたところ味の素の公式レシピでここにネギもプラスされていたので、今回はこちらを採用させていただいた。
またここからは、薬味をプラスすることで味の素の存在が感じづらくなる可能性を考慮して、「豆腐(半丁)」に「味の素」(2振り)という量に統一していきたい。
「絹ごし冷奴(半丁)」に「味の素」(2振り)を振りかけ、その上に、小口切りにした「青ネギ(適量)」を振り、最後に「ごま油(適量)」を回しかければ完成。
口に入れると、ごま油の香ばしさがふわっと鼻を抜けてゆく。そしてシャキシャキとしたネギとなめらかな豆腐の大豆の香りが混ざり合い実に美味い。感心すべきは味の素のバランス力。全体を旨味で包むことで料理としてまとめ上げている。味の雰囲気としては、韓国料理に近いものがあった。
「おろし生姜と鰹節と醤油」:冷奴の王道薬味がアップデートされる
次に紹介するのは「おろし生姜と鰹節と醤油」というちょい足しだ。SNSで寄せられていたのは、「味の素と鰹節と醤油」と「味の素とネギと生姜と醤油」だったのだが、ネギは先述のレシピで紹介していたので、今回は少々アレンジして、おろし生姜・鰹節・醤油でひとまとめにさせていただいた。
冷奴といわれて多くの人が浮かべるであろう、王道の薬味をまとめたこのレシピ。果たして、この組み合わせに味の素がどういった変化を起こしてくれるのだろうか。
「絹ごし冷奴(半丁)」に「味の素」(2振り)を振りかけ、そこに「醤油(適量)」をひと回しし、「鰹節(適量)」を載せ、最後に「おろし生姜チューブ(1.5cm)」載せれば完成だ。
食べると、鰹節と味の素の旨味が合わさった、これまでとは違う複合的な旨味が口に広がった。そのダブル旨味成分が全体をまとめており、豆腐のなめらかさとほのかな大豆の香りとうまくマッチしている。そこに醤油の塩気と香ばしさ、生姜の爽やかさが刺激を与えているのだ。
「ザーサイとオイスターソース」:冷奴が中華の前菜に早変わり
最後に紹介するのは、「ザーサイとオイスターソース」。もっとも異色な組み合わせなので、どんな味になるのか期待が膨らむ一品だ。
日本人からすると意外なトッピングだが、中華料理屋に行くとザーサイの載った冷奴が出てくることもあるので、通な酒飲みの方からすればおなじみのメニューといえるのかもしれない。
「絹ごし冷奴(半丁)」に「味の素」(2振り)を振りかけ、そこに「オイスターソース(小さじ1杯)」を垂らし、最後に千切りにした「ザーサイ(15g)」を載せれば完成だ。
ザーサイの塩気と香りがまず口にガツンと広がると同時に、豆腐のなめらかさとオイスターソースの濃厚な海鮮の旨味が混ざり合い、中華の風を一気に吹かせてきた。オイスターソースのイノシン酸と味の素のイノシン酸が、これまたタッグを組んだ旨味として全体を包んでいるのも印象的だった。
今回、4品の味の素レシピを試してみたが、総じて感じたのは、味の素により旨味がブーストされることで、料理としての存在感が増したということ。言い換えるなら、食べ応えが増したということだろうか。ただ、冷奴が持っていた「単純だからこそ際立つ爽やかさ、軽い食べ心地」は、味の素を入れると揺らいでしまう部分もあるように思えた。
どちらにせよ、数振りするだけで冷奴の世界が広がるのは間違いないので、興味がある人は騙されたと思って一度試してみてほしい。
(文=TND幽介/A4studio)