でも女性は違う。良くも悪くも、何かと“自分”を絡めて考える。母親を喜ばせつつ、できれば自分もトクをしようと、賢く計算するのだ。
そんな女性たちを、私は「親なび姫」と呼ぶ。
「ママ、共有しようよ」
「ママ、一緒に行こう」
などと親をナビゲーションしつつ、親を巻き込んでお姫様気分を味わおうとする女性、の意。支払いの場になると「ごめん、おサイフ忘れちゃった。今度返すから」とペロッと舌を出す。その“今度”は一生訪れないが、これも女子の親孝行の定番だ。
そう、親孝行の感覚や消費内容は、男女で大きく異なる。イマドキの親なび姫たちは、「ええっ!?」と驚くようなモノやコトまで、「ママと一緒」に楽しもうとするのだ。
男性が母に贈る、家事代行サービス
一方、男性の間で最近流行っている親孝行消費といえば、家事代行サービス。クーラーや浴室、キッチンの掃除などをチケットで母親にプレゼントする、という動きだ。
イオングループのカジタクが10年5月から展開する、「家事玄人(カジクラウド)」もそのひとつ。イオンのほか、ビックカメラなど全国2500店舗以上で、ボックス形式で家事代行サービスを販売している。同取締役の楠見敦美さんによると、「ギフトでプレゼントする人の多くは、親と離れて住む30~40代男性」とのこと。
「母親と離れて住んでいて、自分は何もしてやれないから」と、1回の掃除分(1万2000円ほどのチケット)をプレゼントする、というのだ。なんとも泣ける。
ところが、女性はもっと“普段使い”の贈り物や行為を「親孝行」と考えやすい。親とのココロの距離が、男性以上に近いからだろう。
「自分の話をする」も親孝行?
今回、『キズナ系親孝行』の本を書くにあたって1100人の男女に調査したところ、「過去3年間で、内面的な親孝行として行なったことは?」との問いに、女性で多かったのは「親の話を聞いてあげる」こと。以下も、ライトな親孝行が続き、
・「一緒に買い物に行く」(51.5%)
・「親を喜ばせる」(43.5%)
・「親に自分の話をする」(39.0%)
まで。最後の「自分の話~」は、若い20~30代女性に限ると44%にも及んだ。
さらに、親孝行消費の場面では、ライトなだけでなく“ちゃっかり計算”する「親なび姫」の顔も見え隠れする。
たとえば、定番の母娘旅行。
20~30代女性に聞いたある調査で、「(母娘旅行の費用は)全額母親が負担する」と答えた女性が、38%でトップ。続く2位が「それぞれだが、母親が多め」、お留守番の父親が「全額(払った)」も5%いて、全体で6割以上の娘が、親の経済力にちゃっかり頼っていることがわかった(「2007年gooリサーチ『母娘旅行に関する調査』」による)。