お麩、古来の食品がなぜブーム?ダイエット料理革命と斜陽の歴史 生活に定着なるか
昭和に入ってからは、度重なる戦争によって小麦が手に入りにくくなったこともありお麩業界は低迷。また、近年では小麦の多くを輸入に頼ることからも、お麩業者は減少の一途をたどっていた。昭和初期に1000を超えると推定されるお麩の事業所数は、いまでは150程度にすぎない。協同組合全国製麩工業会も、わずか30年前には300社弱だった加入業者が、いまでは100社弱となっている。
そもそも、日本の食文化の洋風化により、純和風の食品加工業者は斜陽の憂き目を見てきた。しかも、お麩は前述のとおり原材料を外来品に頼らざるを得ない弱点を持っている。さらにお麩の製造工程は、原材料である小麦グルテンの取り扱いが難しく、その多くが職人技に依存していることも、長い間、業界低迷が続いてきた原因だった。つまり、後継者が育っておらず、安穏とはしていられない。
また、このところのお麩ブームは一過性のものという見方もある。オーガニック、マクロビオティック、ダイエット、自然食品、健康食品……さまざまな言葉にまみれたバズワードともいえるだろう。
しかも、お麩とその関連商品をあわせても、日本の市場は150億円程度だ。これが倍になったとしても、大ブームというにはまだまだ小さなインパクトといえるかもしれない。古来の食品が、一周して先端の食品になるのは面白い。とはいえ、本物のトレンドとなるか。現在は一部のブームが、国民を巻き込んだブームとなるか。これからの動向に注目したい。
(文=坂口孝則/購買・調達コンサルタント、未来調達研究所株式会社取締役)