消臭剤は危険?除菌・抗菌商品は人体に有害な例も 使用時の注意点は?
ちなみに、なんでも無臭にクリーンにしたがるのは潔癖症気味な、日本人という国民性を反映しているようで、実際、ここまで消臭剤が前面に押し出されて市場を築いている国は日本以外にはほとんど見当たりません。アメリカやEU諸国のドラッグストアでは、芳香剤はあっても、日本のような消臭+芳香という商品は売られていません。
●消臭のメカニズム
各メーカーが設けた芳香消臭脱臭剤協議会で定めた商品区分によると、芳香剤(空間に香りを出す製品)、消臭剤(臭気成分を無臭化する成分を有する製品)、脱臭剤(臭気成分を物理的に活性炭などに取り込み除去する製品)、防臭剤(臭気の発生や拡散を防ぐための成分を有する製品)に分けられます。
これらは、使い方や場所に応じていくつかの商品パターンに分類できます。当然、例外的な商品もありますが、まずはそれぞれのカテゴリーの商品がどうやって臭いを消しているのか知っておきましょう。
(1)据え置き式(ゼリー状、活性炭などの吸着剤タイプ)
プルンとしたゼリー状の物質に、消臭成分が固定された製品が一般的です。ゼリーの正体はゲランガムやウェランガムという食品添加物としても使われる成分で、常温でも崩れない羊羹ほどの軟らかさの固形物をつくるゲル化剤です。その中に双性界面活性剤などの消臭成分を閉じ込め、さらに商品によっては香料も添加されています。
ゼリータイプの商品は、空気に触れた部分のゼリーがしぼんで水が抜けていく際に、表面に出てきた消臭成分がにおい物質を吸着するメカニズムです。従って、このタイプで無香料の商品は、消臭成分などが放出されるわけではないので、生き物の横などに置いても安心な、最も穏やかな消臭方法といえます。また冷蔵庫用などの活性炭消臭剤も完全に臭気成分を吸着するだけなので、ほとんどの製品が無害です。
(2)スプレー式(ガス圧スプレーと霧吹き型)
スプレー式は、消臭成分が据え置き式と似ていても、能動的にまくので吸い込む可能性もあり、安全性が気になります。大まかに2種類、コカミドDEAなどのアミノ酸系シャンプーにも使われている両極性界面活性剤と、オリゴ糖の一種といえるデキストリン(メチル化βシクロデキストリン)が使われています。
いずれの成分も、臭気成分を分子の中に収納するように閉じ込めてしまいます。その後は、無臭の物体となったまま乾燥して床に落ちます。
つまり、ヌイグルミやベッドカバーなどに消臭剤をかけても、臭い物質が消えたわけではなく、臭いを感じなくなっているだけなので、定期的に洗濯などで洗い落とす必要があります。
一部では、「ゴキブリに消臭剤をかけると死ぬ……だから消臭剤は毒だ」と危険性をあおる人がいますが、ゴキブリが死ぬのは両極性界面活性剤が気門(呼吸のための穴)に詰まる窒息死、またはアルコール類が体内に浸透することによるショック死であり、神経に作用し生命活動を止める殺虫剤とは根本的にメカニズムが違うので、人間にとっても有害であるという解釈は間違いです。とはいえ、ペットや肌が敏感な子供がいる家庭では、十分に注意して使用しましょう。
ただ、いずれの成分にもパラベンなどの防腐剤が含まれており、直接皮膚に接触し続けることは望ましいといえないので、汗臭いからと素肌に触れる衣類に毎日のように吹き付けるのは避けたほうがいいでしょう。