自販機の“奥深い”謎 立地特性により商品陳列違う?配送員の勘?新事実が続々発覚
自動販売機は地域のマーケティングの縮図だ。
東日本旅客鉄道(JR東日本)が、現場の経験と勘で管理していた自販機を、マーケティング頭脳を搭載した次世代自販機に替えるという「自販機改革」を起こし話題となったことは記憶に新しい。性別や年代などを識別するセグメントセンサーで、前に立つ人の顔で識別して、おすすめドリンクを提示する。
しかし、現状でも多くの自販機設置場所では、限られたスペースにどの商品を陳列するかはルート配送員に任されている。とはいえ、ある程度はそれぞれの場所におけるデータが活用され、それに地域性と配送員の勘が加えられている。
自販機は、日本の“クール”なモノとして海外から高い評価を得ているほど、日本独特の進化を遂げてきた。自販機の管理には、日本独自のマーケティングの基礎を垣間見ることができる。それは、特に商品の並べ方に表れている。自販機の多くは2段、または3段である。本数でいうと20~30本くらいで、これらは品揃えはもちろんだが、並べ方によって売り上げが大きく変わるという。大手飲料メーカーに、並べ方の秘訣について問い合わせたが、陳列する商品は決まっているが、並べる順番についてはほとんどが現場任せであるという回答であった。
●設置場所の特性が出る、左上の商品に注目
そこで今回、並べ方に注目して、筆者は独自に東京、神奈川、千葉にある自販機約1000台を調査してみた。場所は繁華街、住宅街、幹線道路沿い、銭湯の周り、裁判所内、観光地である。
調査結果を分析してみると、どうやら自販機の左上には、メーカーが特に売りたい商品や目玉商品が配置される傾向があるようだ。いわば、メーカーの思惑がはっきりと感じられる重要場所だ。例えば、日本コカ・コーラの自販機であれば、必ず左上にコカ・コーラが置かれている。
コカ・コーラ以外の自販機で、左上に陳列されている商品を設置場所ごとに調べてみたところ、銭湯の周りでは、スポーツドリンクが21本で最多、ミネラルウォーターとお茶が14本で同数だった。割合で見ると、4割以上はスポーツドリンクを置いていることになる。
「銭湯といえばコーヒー牛乳」というイメージから、コーヒー系が置かれているのではないかと推測していたが、実は「風呂上がりの水分補給」に主眼を置いた配置のようだ。ちなみに、コーヒー系はどこにあるかといえば、2段目に置かれていることが多かった。複数のコーヒー系飲料が揃えられ、2段目の46.2%をコーヒー系が占めていた。
変わって裁判所では、左上に陳列されているのは圧倒的にお茶である。お茶以外で最上段に並んでいるのは、ジュースやミルクティーなど、甘めのドリンクが多かった。リラックスできる飲み物が求められる傾向にあるのだろうか?
観光地では、ダントツでお茶が多い。また、自販機の外観を設置場所の景観に合わせた色やデザインとしている自販機が多く、これを見て回るだけでも楽しめる。