今回の改正は、財政問題を少しでも解消させようと試みているが、果たして計画どおりにうまくいくのだろうか。
まず、大きく変わるのは、介護保険の利用者負担の枠組だ。これまでは一律で1割負担となっていた。ホームヘルパーやデイサービスなどで月30万円のサービスを受けていたとしたら、自己負担は1割の3万円だった。それが一定以上の所得のある者は2割負担となったのだ。所得の基準は、単身者の場合は280万円以上、夫婦だと359万円以上である。65歳以上の高齢者の2割がこの所得枠に当てはまるから、単純計算すると、利用者負担の総額は1.2倍ほど増えることになる。
こうした所得の線引きが適切なのかどうかは、今後の運営を見ていかなければいけないが、「それならば利用しない」という人たちが増えてくることは確かだろう。
●入所対象者のハードルを上がる特養
これとともに、特別養護老人ホーム(特養)に関する枠組も大きく変えられるようだ。まず、入所基準が現在の「要介護1以上」から「要介護3以上」に改められる。要介護1~5までの総数は、2013年末で約420万人。そのうち要介護1と2で約212万人。つまり5割強となっている。ここに入所対象者のハードルを上げることで、一気に希望者が減ることになる。
また、特養では低所得者に対して食費や部屋代を補助するシステムがある。これまでは、所得そのものが低くても多くの預貯金を持っていたり、世帯を分離している配偶者の方に課税所得があったりする利用者もいた。
それでは不公平ではないかという意見があり、預貯金(単身で1000万円以上、夫婦で2000万円以上)、配偶者の所得(世帯分離しても課税所得されている者)がある場合は補助が打ち切られることになった。
なお、不動産所有についても、固定資産評価額で2000万円以上を保有する場合は打ち切るという案が挙がっていたが、今回は見送られている。
今回の改正で利用者にとって最も影響が大きいのは、要支援1、2の人たちが受けている「予防給付」から、訪問介護と通所介護を切り離してしまうことだろう。つまり、ホームヘルパーの訪問、デイサービスへの通所に対する給付だ。
介護認定のうち要支援者は27.7%にあたる。現在は、その5割以上が訪問介護と通所介護を受けているのだから、大幅な削減だ。一応、サービス自体は、区や市町村などの自治体に移して、その裁量に任せるとしている。しかし、地域によってサービスを受けられる内容に高低の差が出てくることは避けられないだろう。
介護保険制度がスタートして15年ほどが経過し、いろいろな綻びが出てきた。今回の介護保険の改正は、その綻びをカバーできるものとなりえるだろうか。今こそ、場当たり的な弥縫策ではない、グランドデザインの再構築が必要だろう。
(文=チーム・ヘルスプレス)