佐村河内、片山祐輔、慰安婦騒動…騙す行為は、生物があらかじめ持っている機能?
作曲家・佐村河内守氏、STAP細胞・小保方晴子氏、号泣県議・野々村竜太郎氏、遠隔操作事件の片山祐輔被告、さらには朝日新聞が記事を撤回した「慰安婦強制連行捏造」の張本人・吉田清治……今年一年は「詐」に満ちていたといって良いだろう。これだけ注意喚起がなされているにもかかわらず、毎日のように「振り込め詐欺」の逮捕、被害も伝えられてもいる。
人が人を「騙す」――多くの人は、その原因をその時の社会や詐欺師たちの人生に求める。これに新たな角度から分析を試みたのが認知科学者の苫米地英人氏だ。
「『騙す』脳の機能は、人類がこの世に生まれて以来、古代から生き残りのために使われてきた。当局や専門家や学者が、こうした『騙し』の暗躍を阻止しようとしても『騙し』の巧妙さはさらに高度になるばかりでまさにいたちごっこの状態である」
そもそも「騙す」という行為は、高度な脳を持った人間だけが行うわけではない。擬態によって天敵の目を騙す昆虫、メスに姿を似せてライバルの警戒心をはぐらかし、まんまと交尾をするゾウアザラシ、そっと巣の中の卵を落とし自分の卵をほかの鳥に育てさせるカッコウ。
生物は生き残るために「騙す」のだ。知能を持った人間の「騙し」は、さらに巧妙である。では「騙されないために」何が必要か? 苫米地氏はこう語る。
「人が行う巧みな『騙し』がどのように考えだされるのか、『騙し』はどのようにして生まれ、どのように働いているのかを考えなければなりません」
苫米地氏の新刊『「騙す脳」を作る』(徳間書店)の中では、「騙す脳」の作られ方とその機能について詳細に分析されている。
「騙されない唯一の防御法は、『騙す脳』を完璧に理解すること」
まもなく「詐」の年も終わりに近づこうとしているが、「騙す脳」はいつまでもあなたを狙っているのだ。
●人類の歴史は「騙し」の歴史である
前項では、「騙す」ことが生物に備わった機能であること、知能を持った人間の「騙し」は高度であるのだから「騙す脳」を知ることが「騙されない」唯一の防御法であることを解説した。そもそも人間は「騙す」ことによって歴史を作っているという。苫米地氏が語る。
「兵法で有名な孫子も『兵は詭道なり』と説いています。つまり戦争とは『欺く』ことで、使えるものを使えないように、近くにあるものを遠くにあるものに、敵をあざむくために味方をあざむき……と、孫子の兵法は戦争で使う『騙し』の教科書なのです」
大河ドラマの軍師・黒田官兵衛、幕末期の吉田松陰など、孫子の「騙し」に影響された人物は多い。近代ではアメリカを破ったベトナム軍は孫子の兵法を応用していたという。何より戦後日本がアメリカと結んだ「サンフランシスコ講和条約」も「騙し」であるといえる。
「講話とは名ばかりで、真の『独立』を与えられていませんでした。未だに国際連合憲章の敵国条項は生きていて、だから日本は国際法上まだ『敵国』とされているのです。このことに多くの日本人がまったく気づかず70年を過ごしているのです」(苫米地氏)
9月26日、安部総理は国連で演説。日本の常任理事国入りをアピールしたが、敵国条項がある限り、なれるハズがないということになる。
苫米地氏の著書『「騙す脳」を作る』は、普段耳にする「騙し」の現実から出発して、日本人が世界から晒される「騙し」の渦にも目を向けていくように書かれている。
「身近なところで如実に目の当たりにできる『騙し』の実態と、それを生み出す『騙す脳』の正体を見極めながら、知らないうちに我々を巻き込んでいた巨大な『騙し』に目を見開く必要があります」(苫米地氏)
知っていて巻き込まれることと、知らずに巻き込まれることには結果に大きな差が出るのは明らかだ。グローバル社会で生き残るにはまず「巨大な騙し」を知らなければならないといえよう。
(文=編集部)
●『「騙す脳」を作る: 騙されないための唯一の防御法』苫米地英人著
(徳間書店/1400円+税)
一向に減ることのない金融詐欺事件や振り込め詐欺等々、身近な社会生活から、はては政治や経済、外交、マスコミに至るまで騙しの構造はエスカレートしている。ではこんな時代をどう生きればよいのか。なにより騙しの仕組みを理解しておくことだ。そうでないと知らないうちに騙しの構造にはめられてしまう。数々の事例から自ら「騙し脳」を作り、転じて騙されない方法を天才認知科学者Dr.苫米地より学ぶ。