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『科捜研の男』近年まれに見るヒドい最終回に「月9史上最悪」「クソドラマ」と批判噴出

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 錦戸亮が主演を務める連続テレビドラマ『トレース~科捜研の男~』(フジテレビ系)の最終回・第11話が18日に放送され、平均視聴率は前回から0.9ポイント増の11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。全話平均視聴率は10.6%で、“そこそこ”の結果を残したといえる。

 ちなみに、ここ最近のフジ月9ドラマの全話平均視聴率は、2018年10月期の『SUITS/スーツ』が10.7%、同年7月期の『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』が10.6%となっており、3期続けてほぼ同じ視聴率を獲得している。月9の枠を恋愛ドラマ路線から職業ドラマ路線に移行したフジテレビの狙いが実を結んだといえそうだ。

 というわけで、数字的には文句のつけようがないのだが、その一方で最終回の内容に対しては「ひどいクソドラマ」「月9史上最悪」といった批判が視聴者から上がっている。

 ストーリーを長々と書いても仕方がないので大幅に省略するが、まず批判の対象となっているのは、「犯人が予想通りだった」という点だ。

 主人公である科捜研法医研究員・真野礼二(錦戸)の家族が25年前に殺害された事件については、刑事部長・壇(千原ジュニア)と、真野に情報を提供する高校教師・早川(萩原聖人)がどう見てもあやしいと視聴者の誰もが思っていた。というより、ドラマ自体が明らかに「こいつらがあやしいですよ」と視聴者に思わせるつくりになっていた。

 いまどき、それを素直に信じるような視聴者は、ほとんどいないだろう。なんらかのどんでん返しがあるのだろうと予想していたはずだ。新聞のテレビ欄にも、「明かされる驚愕の真実 真犯人は誰なのか」という“あおり文句”が書かれていた。だが、最終回で明かされた真相は、どう見てもあやしかった壇と早川が犯人だった。なんのひねりもない結末に、非常にがっかりした。

 壇が事件を起こした動機もひどかった。当時高校生だった壇は、真野の兄・義一をたまたま見かけた瞬間に「あの笑顔を踏みにじってやりたい。苦痛にゆがむ顔が見てみたい」と思い、最後には手下を使って義一を殺すまでに至ったというのだ。このオチはまったく評価できない。

 真犯人がサイコパスや異常者だった、といった結末のドラマや映画は時々あるが、基本的には、そんな結末にすべきではないというのが、筆者の考えだ。なぜなら、犯行に至る動機に合理性や必然性がいらなくなり、犯人がどんなにつじつまが合わない言動をしても「サイコパスだから」「異常者だから」ですんでしまうからだ。つまり、「なんでもあり」になってしまい、何も考えなくても脚本が書けてしまう。こんな安易なラストを選んだ脚本には、心底がっかりした。

 さて、そんな壇は早川に刺されて意識不明の重体に陥る。ドラマ的にはそのまま死んでしまったほうが悪者の末路としてふさわしかったとは思うが、ラストでも病院のベッドで横たわる壇の姿が映し出された。次の瞬間、壇はカッと目を見開いて意識を取り戻す。そして、そのままエンディングを迎えた。

 この終わり方についても、視聴者からの批判が殺到している。一言でいえば、スッキリしないからだ。最終回の内容はかなり胸クソ悪いもので、真野が慕っていた姉が実はクズだったことが判明するなど、救いのないつらい展開が続いた。それだけに、真野がすべてを乗り越えて日常に復帰したシーンを見て、少しは不快さを解消して穏やかな気持ちでドラマを見終えられると誰もが思ったに違いない。それなのに、「まだ黒幕は生きていますよ」というシーンをラストに差し込んで視聴者を絶望に突き落とすとは、本当にこのドラマの制作陣は趣味が悪い。

 もうひとつの側面として、もし続編がつくられる場合、壇の続投がこれで確定してしまったというのも、視聴者をがっかりさせている。仮に続編や特別編があったとしても、真野の過去にかかわる「武蔵野一家殺人事件」の話は、もうやらなくていいのではないか、という声は少なくない。壇が再び真野の前に立ちはだかったところで、真野が復讐するわけにはいかないのだから、決着などつきようがないのだ。一話完結の科捜研ドラマとして十分見られる水準に達していたのだから、それでいいのではないだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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