ルネサスの経営は狂っている…相乗効果なき巨額買収を繰り返す、呉CEOに疑問広がる
ルネサスエレクトロニクスが迷走し始めた。これまでは、作田久男CEOが経営の立て直しに懸命に努力してきた。売上高営業利益率が10%を超え、売上は減少しながらも経営基盤を立て直してきた。それを実質的に引き継いだ、旧興銀出身の呉文精代表取締役社長兼CEOは、成長戦略に転じ、攻勢をかけ、アナログ半導体の米インターシルを32億ドルで買収してきた。
ここまでは良かった。アナログICやミクストシグナルICと、ルネサスの得意なマイコンとはなじみが良い。アナログ半導体はセンサとつながり、まだA-Dコンバータともつながり、マイコンでシステム全体を制御できるようになる。さまざまな組み込みシステムやこれからのIoT(モノのインターネット)デバイスは、お互いに補完関係にあり、共に成長していけるはずだった。
ところが、この2018年度第3四半期(7~9月期)は減収減益となった。それも本業の営業利益が前年同期比で9%も下がった。世界の半導体が15%前後成長しているこの時期にもかかわらず、である。ルネサスは完全に狂った。世の中の景気が上向いているなかだから、ルネサスの状況は本当にまずい。
どこから歯車は狂ったか
この狂いはどこからきたのか。インターシルを買収しても、買収した側の呉CEOがインターシルから信用されていないことが最大の要因であろう。異なる企業文化の企業を買収して同じ仲間とするためには、世界の半導体ビジネスでみられるように、互いに尊重し合い、かつ常に話し合い、買収した経営者は相手の企業が相乗効果を発揮するためにとことん話し合いに行くことが基本である。
特にCEOの役割は極めて大きい。CEOが責任持って、買収した相手の企業に安心感を与え、これまで以上の業績が得られるように相手にビジョンを説明していかなければならない。買収した企業の国に常駐する気持ちで理解を深める必要がある。米国政府の方針でアプライドマテリアルズによる東京エレクトロンの買収は残念ながら成立しなかったが、アプライドのCEOが東京エレクトロン(TEL)に常駐していた逸話は、まさにアプライドの企業文化とビジョンの理解をTEL側に示すためであった。
インターシルはルネサスがどのようなビジョンを持って買収し、インターシルに何を期待しているのか、インターシルは理解できただろうか。もし理解していないのなら、ルネサスのトップは説得に行かなければならない。しかし、これまでの業績を見る限り、半導体ビジネスは追い風を受けて世界の成長率が15%という時期にもかかわらず、ルネサスの売上はほとんど伸びていない。つまり、相乗効果がまだ見られていないのだ。