PayPayやLINEPayなどスマホ決済サービス普及を阻む“最後の障害”
そこで期待できそうなのが、PayPay、LINE PayなどのスマホとQRコードを使った新しい決済方式です。これは、中国などですでに先行して使われている技術で、アプリをダウンロードすることでスマホを決済端末に変身させることができます。この方式は、QRコードの印刷で済むため、端末の導入コストも安価なものとなります。また、運営事業者がこの先1-2年は手数料を無料としている点なども考えると、小規模事業者の普及拡大につながる可能性を秘めているのです。
消費者が本当に便利だと感じるかどうか
こうなると、消費者のスイッチングコストとして最後に残るのは決済時の使い勝手です。しかしながら、この点においていくつかの問題が残ります。
この方式は、店舗側は簡単な作業で済む半面、消費者側がアプリを起動して、QRコードを読み取らなければならないというデメリットがあります。従って、現金でやり取りをする手続きに比べて決定的に便利になるかどうかは、各消費者のスマホに対する習熟度合いに依存することになるからです。
しかも、おサイフケータイの事例で述べましたセキュリティ・紛失などの安全性に対する不安は、残り続けることになります。また、機器の故障への心配、機種入れ替え時のセッティングなどの手間も発生するため、カード型電子マネーほど簡単で使い勝手がいいとは言い切れません。
このように、今後のキャッシュレス化の加速は、この新しい方式のほうが現金で決済するよりも便利だと消費者が感じるかどうか(スイッチングコストが下がるかどうか)にかかっているといっても過言ではありません。街の商店街レベルでも使えるような利用店舗数の拡大により利便性が拡大し、かつ、利用者が機器の利用も含めて十分に便利だと思えるかどうか。7pay(セブンペイ)の不正アクセス事件の記憶が消費者に残るなか、新しいスマホ決済の行方はどうなっていくのでしょうか。
(文=高杉康成/コンセプト・シナジー代表取締役、経営学修士(MBA)、中小企業診断士)