(au)は8月25日、auユーザーに向けた新サービス「au WALLET Market」を開始した。携帯電話キャリアながら、auショップでモノを販売するというこれまでにない取り組みだが、そうしたサービスを提供するに至った背景と、課題について考えてみよう。
ECを利用しない人をターゲットに
プリペイドの電子マネーを用いた決済サービス「au WALLET」など、最近では生活系サービスに力を入れているau。そのauが新たに打ち出したサービスが、「au WALLET Market」というものだ。
これは、簡単にいってしまえばauショップで商品を販売するサービス。といってもauショップに商品の在庫を置いて販売をするわけではなく、タブレットを用いて店頭で商品を購入してもらい、商品自体はあとから配送される仕組みとなっている。
サービス内容を見ればわかる通り、au WALLET Marketは、ECサービスを店頭で利用してもらうための取り組みだ。わざわざECをキャリアショップで利用する理由を見いだせない人もいるかもしれないが、au側の狙いは、シニアなどあまりECを利用していない、あるいはECの利用に抵抗がある層の取り込みにあるようだ。
ECのサービスを利用するには、インターネットサービスにアクセスして個人情報やクレジットカード情報を登録する必要があるため、それらの情報が流出してしまうことを懸念する人も少なくない。また、ECの利用に慣れていない人にとっては、「カート」などECで一般的な仕組みも、決してわかりやすいとはいえないものだ。
そうしたECをあまり利用していない人たちの不安を解消し、利用を促進する上でも、auは店頭にこだわったサービス展開に至ったといえよう。実際、au WALLET Marketは店頭でタブレットを用い、わからないことがあればauショップの店員に直接聞くことができる仕組みを設けている。
配送先の個人情報はauに登録されている情報を活用して入力の必要をなくしたほか、決済は現金をベースとしつつ、WALLETポイントやauの携帯電話料金と一緒に引き落とされる「auかんたん決済」を利用できるようにすることで、クレジットカードを使わない安心感を与えている。
競争停滞によるショップの苦境が影響か
auがこうしたサービスを提供するに至った背景として、店頭のユーザーの待ち時間増加を挙げている。スマートフォンの利用者が増えたことでショップで対応すべき要素が年々複雑化していることから、キャリアショップの待ち時間は長くなる傾向にある。そうした待ち時間を有効活用しながらも、新しいビジネスへと結び付けていく上で、店頭でEC体験をしてもらうというサービス展開に至ったとしている。