日本のキャッシュレス決済はこんなに危険…政府主導の普及で詐欺被害拡大は必至
QRコード決済も海外では減少傾向
また、クレジットカードの裏にサインしている人が多いですが、盗まれたらすぐにマネされて悪用されます。サインがなければ、盗んだ人がサインをしても、カード会社が過去のサインと比べてすぐに不正利用を発見できます。
カードを紛失した利用者に対してカード会社が被害を補償する場合、裏にサインしてあるかが問われます。しかし、紛失したカードを確認する術はなく、第三者による不正使用が確実に認められた場合に限り、補償がなされます。
例えば、ヘルパー、ベビーシッター、家族などがカードを悪用したり、暗証番号を使いまわしていたり、電話番号にしているなど自己管理ができていない場合は補償されません。また、2カ月経過している場合も補償対象外です。最近は、ウェブメールで明細書が届く場合もありますが、迷惑メールに仕分けされ、削除されていることもあります。明細書が郵送の場合でも、決済から1カ月経過していることもあり、出張と重なり長期間確認が遅れることもあります。もちろん警察への紛失届の提出も必要です。金融機関などを装ってメールを送信してクレジットカード番号などを盗むフィッシング詐欺でも、同様で自己管理がされていない場合は補償されません。
また、なんとか Payなどのスマホ決済サービスが不正使用された場合は、端末ロックの暗証番号が単純なものだったり、1カ月以内に被害を警察に届けていなかった場合なども、補償されるとは限りません。また、補償されても10万円までなどと限度額がある会社もあり、特にQRコード決済では、悪用された場合の補償内容はまだ確立されていません。ネットショッピングはオンラインプロテクションとしてオンライン不正利用保険に加入していないと補償されないこともあります。
こうしたことから、イギリスではQRコード決済はほとんど見かけず、あんなに普及していた中国でも利用者は減少しています。違反駐車の張り紙のQRコードで支払いをすると、詐欺で違う口座に振り込まれていたり、レジに並んでいた後ろの人から肩ごしにスマホでスキャンされ、詐欺に遭うケースが増えているからです。同様の被害は日本でも増えています。特に偽造されやすい紙でQRコードを配布している場合、詐欺ではないかと疑うことも大切です。
そのため、自己防衛策として、ネットショッピングでは店のサイトにクレジットカード情報を登録せず、支払いの都度入力したり、個人情報登録では無料メールアドレスを使ってメルアドや名前を頻繁に変えたり、後払い制度を利用することをお勧めします。
さらにスキミング被害も、管理体制が不十分だと補償されません。
海外では、満員電車などでスキミングされないよう、非接触ICカードデータの不正読み取りを防止するスキムブロックのRFIDシステムや、電磁波を使った金属が組み込まれているカードや財布、スマホケースなどを使用している人も多いです。
海外に10年間滞在した経験がある私には、「人と見れば悪人と思え」という感覚が身についています。日本人は人を信用しすぎていて、対策を取らない人が多いと感じます。だからこそ、キャッシュレスが進むと被害が拡大することは目に見えています。政府が主導するかたちで対策に取り組むべきでしょう。
(文=柏木りか/城西国際大学准教授、生活経済ジャーナリスト)