(運営元:BearTail)より
ネットでは非常に話題になったこの「Amazonガチャ」が、実際はどういうサービスを目指していたのか、何が問題だったのかをあらためて考えてみよう。
●Amazonガチャは「4500円分の福袋」
Amazonガチャというサービスを非常に簡単に説明すると、「4500円分のものが詰まった福袋を5000円で買う」というイメージだ。確実に500円損になるわけで、そんなサービスを使う人がいるのかどうかは別として、その内容自体に大きな問題はない。500円はいわゆるシステム利用料で、代理人が4500円分の買い物をAmazonでして送ってくれるというだけだ。
ただ、このイメージが伝わりづらかったために問題になった。すべての問題は「Amazonガチャ」というサービス名にあったのではないだろうか?
まずタイトルに大きく「Amazon」と入ったことで、まるでAmazonがサービスを提供するように見えてしまった。よく読めば提供者として別の企業名が出ているのだが、それがAmazonから委託を受けている業者なのか、勝手にAmazonを名乗っている悪徳業者なのか、Amazonのシステムを利用するだけの業者なのかの区別がつきづらかった。
また「ガチャ」という言葉がギャンブル性を連想させた。特にSNSゲームで問題になったこともあり、「ガチャ」という言葉は悪いイメージを引きずっている。そのせいで、「5000円入れれば2000円分しか物がこない可能性もあるが、5万円分の物が来ることもあるのかもしれない」という期待を持った人もいるだろう。
この2つが組み合わさったことで、「なんだか胡散臭いサービスをAmazonの名前を騙ってやろうとしているヤツがいる」という印象が強くなったのではないだろうか。
●Amazonの豊富すぎる品揃えも1つの障害?
「5000円払ってAmazonで商品を指定せずに代理購入してもらう」というのがAmazonガチャの実態だったわけだが、このサービスの目的は、商品との意外な出会いを演出するというところにあったという。
つまり自分で5000円分の買い物をしようとした場合、自分が興味を持ったものしか購入しないが、ガチャを使えば思いがけない商品が送られてくることで新しい出会いがあり、おもしろいということだ。一見、興味深いようにも思える。ただこれは、Amazonの品揃えがあまりにも豊富であることが不安につながった。
例えば本が4500円分来るというならば、それなりに楽しめるだろう。しかしAmazonには非常に多彩な商品がある。雑貨や飲食物も多い。可能性だけをいえば、男性に女性用下着が届いたり、園芸用の土がどっさり届くという可能性もあるわけだ。幸福な出会いよりも途方に暮れる自分を想像した人も少なくなかったようだ。
●学生ベンチャーのノリにネットが炎上
まずこのサービスを提供していた「株式会社 BearTail」がどういう会社なのかといえば、筑波大学の現役学生が2012年に設立した、いわゆる学生ベンチャーだ。社員はみな個人でFacebookアカウントを運用し、自社サイトでも公開。略歴を見ると、それぞれインターネットやコンピュータにも詳しいようだ。サイトには5人の名前が挙がっているが、全員が21歳と非常に若い。
「学生がノリだけで考えた」「ネタのつもりだった」「就職活動のために何かした実績がほしかっただけだろう」というようなコメントもインターネット上では飛び交っていたが、この簡単なプロフィールだけを読めばそう考えてしまうのもムリはないかもしれない。
サービスの正当性追及にあたっては、Amazonの商標権侵害や不正競争防止法への抵触なども指摘されたが、一応あの段階では法的には問題がないとう見解を運営者側は示していた。それでも、好意的に受け取る人ばかりではないということに考えが至らなかった点については軽率だったというしかないだろう。
しかし、ネットの反応が大きすぎたようにも思える。
今は誰かが何かをすれば、あっという間にSNS等を通じて広がる。これはよいことも悪いことも同じで、昔のように近しい人や一部の先行ユーザーからの指摘を受けて改善を重ねながらゆっくりと展開するというのは難しい状況だ。ある意味、空気に負けたサービスだともいえるだろう。