Facebook、脅威の「競合」に徹底的な対抗措置…他社の人気機能をそのまま再現
あらゆる場所にSnapchat対策を張り巡らすFacebook
そうした若者のトレンドを創り出したSnapに対して、Facebookは対策に乗り出す。真っ先に挙がるのが、1年前の16年8月にSnapchatと同じ機能を傘下の写真共有サービスInstagramに実装したことだった。しかも、同じ名前で。
結果的に似ている機能を実装することは、これまでもウェブ業界、アプリ業界でよくあることだった。しかし名前まで同じ機能をぶつけてきた点は印象的だ。しかも、SnapchatよりもInstagramのほうが、より多くのユーザーを獲得してしまったのは皮肉な話だ。
Facebookによると、InstagramのStoriesを利用しているユーザーは1日に2億5000万人に上り、そもそものSnapchatの日間アクティブユーザー数1億6600万人を大きく上回ってしまった。
それだけではない。17年4月に月間アクティブユーザー数10億人を報告したFacebookのメッセージアプリ、Facebook Messengerにも「My Day」として、24時間で消える写真やビデオを投稿する機能を実装した。
さらに、13億人のユーザーを抱えるFacebook傘下のメッセージアプリWhatsAppにも、「WhatsApp Status」として同様の投稿機能を用意した。17年2月に公開した後者に関しては、すでにInstagramのStoriesと同じ日間アクティブユーザー数2億5000万人を達成したのだ。
Facebookに疲れても
Facebookによると、InstagramのStories導入後のInstagramは、若者からの人気が高まっているという。Instagramの最も多い年齢層は25歳以下で、彼らが1日にInstagramに費やす時間は32分だった。25歳以上のデータは24分であり、Storiesが若者のエンゲージメントを大きく高めていることがわかる。Snapchatの1日当たりのアプリ滞在時間は30分。Instagramが1日当たりの滞在時間を発表したのは3年前の14年だったが、当時は1日当たり21分であった。そのことからも、Storiesをマネしたことで、若者層へのInstagramのエンゲージメントを大きく高めることができたことがわかる。
日本でもささやかれている「Facebook疲れ」。Facebookアプリのエンゲージメントの低下を指すと同時に、生活全般を友人と共有していくFacebookに対して、心理的に後ろ向きな印象を持ってしまう意味も含む。
しかし、InstagramのStoriesは、よりアクティブな友人との共有という「楽しさ」が強調される場であり、エンゲージメントの高まりが観測されている。また、Facebookに疲れたとしても、メッセンジャーやWhatsAppで連絡は取り合うことはやめないだろう。
ユーザーは気にしないかもしれないが、Facebookも、Instagramも、メッセンジャーも、WhatsAppも、すべてFacebookのアプリであり、Facebookのユーザーなのだ。さまざまなコミュニケーションの方法をカバーすることで、世界中の人々を、Facebookのビジネス上に存在させる戦略は、今後も続いていくことになる。
その取り組みは、インターネット接続に乏しい地域に対して、空からネットアクセスを提供する手段を使ってまで、加速させているのだ。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)