低迷する日本メーカーが目指すべき京セラ路線
タフネススマホ市場は今後どのようなフェイズに入っていくのだろうか。また、どういった技術が求められるのだろうか。
「進化のベクトルとしては予想されるひとつは、さらなる長時間運用が可能になること。『DuraForce PRO』は連続通話が約20時間ですが、常時使っている場合、充電切れの心配がないようにするならば1日1回は充電したいところでしょう。
ですが、タフネススマホが特に重宝されるのはアウトドアの環境下であり、簡単に充電ができないケースが多いことは想像に難くありません。ですから、さらに電池の容量を大きく、消費電流は小さくするといった、より長持ちさせる技術が必要になると考えられます。
京セラをはじめとするタフネススマホ市場に参入しているメーカー各社は、今後は電池をどれだけ長く持たせるかが大きなポイントになってくるのではないでしょうか」(同)
電池の持続力の技術向上はタフネススマホに限らず、スマホ市場全体に歓迎されるだろう。
しかし、現時点で日本メーカーのスマホが、世界のスマホ市場で存在感を示せていないのは事実。最後に、日本メーカー製のスマホは、今後、どのように闘っていくべきなのか伺った。
「日本メーカーによるスマホの売り上げは、ここ数年、ずっと右肩下がりなんです。かつてのガラケー時代は、日本に11社の携帯メーカーがあり、当時、日本の携帯電話は機能もサービスも世界最先端といわれていました。
しかし、ご存知のように残念ながら世界のスマホ市場の波にはうまく乗れず、今残っている日本のメーカーは京セラ、ソニー、シャープ(現在は鴻海精密工業傘下の外資系メーカー)の3社のみ。
日本で売れるものだけつくっていてもなかなか世界で勝負できませんし、仮に世界で出しても販売台数は伸びません。というのも、市場を占める二大巨頭であるiPhoneとGalaxyは、最初から数千万台の数を売る前提のため、莫大な予算と人員を投入して開発を進められるんです。そういった状況ですから、残念ながら今の日本メーカーにiPhoneやGalaxyを超えるスマホをつくれと言うのは、不可能に近いこと。
とはいえ、今回の『DuraForce PRO』のような好例も出てきています。京セラがアメリカをターゲットにして挑戦し、タフネススマホというジャンルで好感触を得られ、そのジャンルを突き詰めた結果、この商品を生み出したという事実は大きいでしょう。
これはスマホ市場に限った話ではないですが、今後、日本のメーカーのやるべきことは、得意な分野を突き詰めていくこと。京セラはもともとセラミック陶磁器の企業でしたが、他の企業がまださほど足を踏み入れていない分野のものをとことん研究開発して、モノにしてきました。京セラのこういったやり方は、まさに日本のものづくりのお手本と言えるでしょう。日本のメーカーもこれからは世界トップのシェアを狙うのではなく、ニッチではあるけれどある一面に特化した技術を持った製品開発をしていくべきだと思います」(同)
あえてアウェーとなるアメリカ市場に狙いを定め、果敢に突き詰めたことで成功した京セラのタフネススマホは、低迷にあえぐ日本メーカーの今後の“在り方”を示しているのかもしれない。
(文=A4studio)