そもそも、ネットは誰でも自由に発信できる場所だ。「漫画村」のような海賊版サイトが出てきてしまうのは、ある意味で仕方がない現象ともいえる。
「それを政府が力ずくでサイトごと潰すというのは、さすがにやりすぎという気がします」(同)
こうした海賊版サイトに対抗する有効な手段はひとつ。それは、向こうが「この人とかかわると面倒だ」と感じる存在になることだという。
「たとえば、漫画家だったら徹底的にネット上でエゴサーチをし、自分の著作物が無断で使われていたら『私が規定した金額は1ページ当たり5万円です』などと必ず通告する。あるいは、即座に強硬な法的手段に出る。手間がかかるというなら、そのためのバイトを雇えばいい。そんな作家が出てきたら、海賊版サイトとしては『面倒くさい人』『この人とかかわってはいけない』となります。結果的に、作者やコンテンツを守ることにつながるわけです」(同)
ネットニュース編集者でもある中川氏は、日頃からさまざまな人物に関する記事を扱うため、取扱注意の「NGリスト」を作成しているという。
「良い文脈にせよ、悪い文脈にせよ、NGリストに載っている人は記事にしません。トラブルになるなど、後々面倒なことになるのを避けるためです」(同)
そうした「面倒くさい」の典型が、ジャニーズ事務所だろう。ジャニーズは所属タレントの写真の扱いにうるさく、無断掲載はもちろん、最近までタレントの写真をネットに掲載することもNGにしていた。こうした姿勢は、逆にいえば無断使用などを思いとどまらせることにつながるといえる。
バブル状態のネット広告
もっとも、こうした方法を取らなくても、海賊版サイトはいずれ消えていく可能性が高いという。それは、「ネット広告バブル」の終焉と関係しているようだ。
多くのネットサービスは広告によって収益を上げるビジネスモデルとなっている。需要の高い魅力的なコンテンツやサービスを生み出し、多くの人に訪問してもらい、それによりクリック広告や広告商品の販売で利益を上げる。「漫画村」も同様で、海賊版サイトはネット広告の収益があるからこそ存在できたわけだ。
そんななかで用いられていたのが「アドフラウド」である。アドフラウドとは「広告詐欺」のことで、botなどを使って無効なインプレッション(広告が表示された回数)やクリックを生み、広告効果などを不正に水増しする行為だ。