「短期的に見れば、有料駐車場にとってライバル関係となり、自分たちの利益を損ねる存在だと認識されるかもしれません。しかし長期的に見ると、考え方は変わってきます。『みんなの駐車場』の広告モデルが大きな成功を収め、代金を支払う時間貸しモデルよりも収益性が高いと認められた場合、最大手のパーク24の『タイムズ』がこのビジネスモデルにシフトチェンジすれば、この業界で一番儲けられるようになります。つまりパーク24側は、『みんなの駐車場』の実験的な無料化がうまくいくかどうかを、虎視眈々と観察しているように思えます」(同)
無料駐車場が普及する可能性は低い
では、無料駐車場は普及していくのか。
「私見ですが、完全無料の駐車場が全国的に展開していくのは難しいと考えています。なぜかというと、位置情報を用いたビジネスモデルというものは、どれだけの人数が広告を目にするかといった規模感が重要だからです。わざわざ駐車場に絞って広告を出すよりは、そのエリアに入ってきた人全員に広告を出すほうが、広告を目にする人は多くなり効果的です。要するに、そこまで広告需要が見込めないため、駐車場を無料化して広告収入で利益を出すというビジネスモデルは難しいように感じます。
ビジネスアイデア的には、完全無料の駐車場を運営するのではなく、“基本的に駐車料金はかかるが、広告やクーポン券が表示された店で○円以上利用したら無料になる”といった仕組みのほうが、ビジネスとして成立しやすいと思います。広告モデルよりも、実際に収益が発生した場合に割引するといったアクションモデルのほうが、現実的ではないでしょうか」(同)
確かに広告を表示してもらうだけではなく、実際に店に足を運んでもらえる導線を引いた仕組みのほうが、広告主としてのメリットは大きいのかもしれない。ドライバーにとっても、配布されるクーポン券で安く買い物や食事を済ませることができるうえ、駐車代が無料になるのであれば、積極的に利用しようという動機につながるだろう。
「ただし、駐車場無料化という試み自体は非常におもしろいと思いますし、一定の需要もあるでしょう。特に、都心のような人が多い場所や、なんらかのかたちで空き駐車場があり、それを活用したいという意志のある地域ならば勝機もあると思います。うまくニーズを汲み取り、がんばってほしいものです」(同)
「みんなの駐車場」のような完全無料の駐車場が全国的に普及していくのは難しいとのことだが、ドライバーにとってはうれしいサービスであるのは間違いない。普及するか否かの鍵を握る「みんなの駐車場」の今後の展開に注目していきたい。
(文=A4studio)