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大塚将司「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第1部>」第6回

カネでOBを買収し、合併を目論む巨大新聞社を阻む“事情”


 「そういうことか。それで、日亜5株=大都1株と言っているのか」
 「それだけじゃないですよ。日亜5株=大都1株なら、うちの株数は6000万株から大都さんと同じ1200万株に減ります。新会社の株式保有割合は日亜株主と大都株主が半々になるうえ、社主の持ち株比率も25%から12.5%に下がります」
 「社主の持ち株比率が下がるのはいい。でも、うちと君のところの資産内容を比較すると、日亜6株=大都1株か日亜7株=大都1株が妥当だと思うがな」
 「先輩、日亜5株=大都1株でも、うちの株主は損するんですよ。今、うちは1株6円配当をしていますので、5株で30円の配当を手にできます。でも、合併後は大都が5円配当のままなら、5円減ってしまうんです。旧亜細亜出身の株主が厄介だ、というのは配当の問題もあるんです」
 「わかった。うちが存続会社だしな。合併比率は日亜5株=大都1株でいい。もう時間がないから、最後のネット新聞のことを決めようや」

 松野が腕時計を見て、渋々村尾の主張を受け入れた時、「美松」の玄関の硝子戸が開いた。呼んでいた2人のうち1人が来たのである。

 「もう来ちゃいましたね。ネット新聞の扱いは、2人を入れて話してもいいんじゃないですか? 意見に、それほど違いがあるわけじゃないですから…」

 村尾が反応した。すると、また、玄関の硝子戸の開く音が響いた。

 「2人とも来たな。君の言う通りにするか。2人ともびっくりするぞ」
 「誰と会っていると言っていないんですか?」
 「そうだ。君はどうなんだ?」
 「私もですよ」
 「じゃあ、玄関で2人ともびっくり仰天さ」
(文=大塚将司/作家・経済評論家)

※本文はフィクションです。実在する人物名、社名とは一切関係ありません。

※次回は、来週11月24日(土)掲載予定です。

【過去の連載】

第1回『新聞を読まない、パーティー三昧…巨大新聞社長の優雅な日々』
第2回『社用車で演歌を唸り、ホテルのスイートを定宿にする巨大新聞社長』
第3回『ウェブ化で傾いた大手新聞、合併にすがる社長同士が密談!?』
第4回『巨大新聞社を揺るがす株事情、マスコミは見て見ぬふり…』
第5回『巨大新聞社、外部からのチェックゼロで社長のやりたい放題!?』

●大塚将司(おおつか・しょうじ)


作家・経済評論家。著書に『流転の果てーニッポン金融盛衰記 85→98』(きんざい)など

BusinessJournal編集部

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