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深刻な企業の後継者不足、一挙に解決するウルトラC?自治体取り組みも成功皆無

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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 食材の調達など、取引先との関係も、昔からの信用が物を言うだろう。廃業を避けることができれば、従業員は安心してそのまま働いてくれるだろうし、経験やノウハウが豊富な前経営者やベテラン従業員がいろいろ助けてくれるかもしれない。

 観光協会などとも従来通り付き合っていれば、広告・宣伝も行いやすい。なにより、屋号の知名度があり、固定客(リピーター)が存在し、それが固定収入につながる、という流れがすでにできている点が心強い。ベンチャーにとって最初の関門である「創業期の経営の安定」をクリアできるからだ。

 そういうふうに、有形無形の資産を生かしながら、起業家は自分のやりたいことを付け加えていく。例えば、外国人が好みそうな設備を新設したり、イベントを企画したり、外国人従業員を雇ったり、コミッションを支払って海外の旅行代理店と提携したりして、「おもてなしビジネス」に必要な部分を整備していくのである。

 旅館の建物という「抜け殻」を不動産物件として買い取るだけでは、こうはいかない。営業中の温泉旅館という「生きている企業」をそのまま継承することで、起業の成功率を高められる点が、「後継創業」のメリットである。

約3分の2の企業が後継者問題に悩んでいる

 帝国データバンクが2014年7月に公表した「後継者問題に関する企業の実態調査」によると、国内企業約28万社のうち65.4%の約18万社が「後継者不在」と回答している。

 回答企業の99%以上は中小企業で、そのほぼ3分の2が後継者問題に悩んでいるか、すでにあきらめている。業種別では、建設業とサービス業の後継者不在率が70%を超えている。旅館のようなサービス業だけでなく、商店も卸売も町工場も農業も後継者難であり、後継創業の対象企業は無数にある。

 例えば、自社倉庫を持っている卸売の会社で後継創業をしたとしよう。その倉庫は、継承した起業家が新規事業として始めるEC(電子商取引)のインフラとして活用できる。事業を拡大したいが倉庫の問題が障害になっているECサイトも多いので、倉庫を貸して副収入を得ることもできるだろう。

デメリットは企業自体と「人」に潜む

 以上が後継創業の主なメリットだが、「生きている企業」をそのまま継承するため、当然ながらデメリットも存在する。

 まずは、継承する企業自体の問題だ。業績不振、過大な負債、経営者の個人保証や過去のスキャンダル、係争中の事件など「負の資産」も継承しなければならない。帝国データバンクや東京商工リサーチなどを利用して、事前に企業調査を行うことが不可欠だろう。

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