言うまでもなく、日本中すべてのカップルから生まれる子どもの数が2人以下だと、必然的に日本の人口は減り始める。社人研による出生率の新推計値でも、50年間ほぼ横ばいで推移し、2050年時点での出生率は「1.39」人と予測。ちなみに、1997年に出された推計値では、楽観的な「1.61」人という予測になっていた。
社人研・人口動向研究部の高橋重郷部長は語る。
「97年に出生率の全国調査を行なった際、『少子化』傾向はデータ上でも確認された。だから日本の場合、出生率はなかなか回復に向かわないだろうというのが、我々の考え方です。東京に至っては、今や『1』ぎりぎりのところ。社会の変化は結婚や出産行動にも関わってくるわけですが、日本ではそれが極めて悪いほうに進んでいると…
貯金していたほうがよっぽどマシ
そこで問題となるのは、“出生率はきっと上向く”との楽観的なシナリオを基に描かれてきた「公的年金の財政計画」への影響だ。日本が超高齢化社会へと突き進む中、出生率が回復しないとなると、年金をもらう人だけが年々増加していく一方で、年金保険料を支払う人は年々減少していくことになるからだ。
三井住友グループ系のシンクタンク「日本総合研究所」の試算によれば、1930年生まれの既婚者で、妻が専業主婦である場合、それぞれが平均寿命(夫78歳、妻86歳)まで生きれば、支払った年金保険料総額の4倍以上の年金がもらえるのに対し、1970年生まれの場合は支払った額の7割程度しかもらえないという。同い年の単身者に至っては、なんと44%しかもらえない。
早い話、公的年金はすでに貯蓄ですらありえず、事実上の“掛け捨て保険”と化しているのだ。少なくとも若い世代にとっては、目減りしてしまう年金より、せっせと貯金していたほうがマシ――ということになる。
年金は「公的制度」であるにもかかわらず、ここにきて不公平極まりない制度となってしまった。
では、なぜこのような世代間格差が生まれてしまったのか。スタイルアクト株式会社代表取締役で不動産コンサルタントの沖有人氏は、次のように解説する。
「図1を見ていただければわかるように、年金計算の基礎としてきた『将来推計人口』は、過去20年間にもわたって予測を大きくはずし続けてきたんです。となれば、年金受給者が増加し、負担者が減少することなど『予測』できるわけがない。これが最たる要因に挙げられるでしょう」
作成:スタイルアクト(株)沖有人氏