しかも、金(キム)、李(イ)、朴(パク)、崔(チェ)、鄭(チョン)の5つの姓だけで過半数を占めます。「韓国人はやたら金が多い」という印象を持っている人も多いと思いますが、あながち間違いではありません。
しかし、その金の中にもいくつか系統があるのです。例えば、韓国では同じ姓の人同士が出会ったとき、「本貫はどこですか?」と聞くことがよくあります。本貫とは、その家系の始祖の出身地を表す言葉で、韓国統計庁の調べでは約4200にも上ります。同じ姓でも本貫が異なれば始祖も異なり、本貫が同じであれば始祖が同じであることを意味します。例えば、最大姓の金には金海(キメ)、慶州(キョンジュ)、金寧(キムリョン)など285の本貫があるといわれています。金海出身の金氏は、「金海金氏」などと呼ぶこともあります。
縁故を重視する韓国においては、「本貫と姓が同じであれば親族と見なし、結婚を禁ずる」という法律が1997年までありました。現在では、8親等内の親族との結婚が禁じられています。ちなみに日本では3親等以内の親族婚が禁止ですから、韓国の規制はかなり厳しいといえます。
世界的に悪評広まる韓国人男性
嫁不足に悩む韓国では、そのような厳しい規制が拍車をかけているとの指摘もあります。経済格差が激しさを増す昨今、農村を中心に結婚できない男性があふれています。日本でも農家の嫁不足が問題になっていますが、韓国はさらに輪をかけて深刻です。そのため、農家の男性は2000年前後から積極的に外国人の女性を嫁に取り始めました。
ところが、それが国際問題に発展しているのです。イスラム圏の国々やインドなどは男尊女卑の考え方が浸透しているといわれていますが、韓国も同様です。
そのため、悪評が広がり、昨今は韓国人男性との結婚を避ける女性が増えてきました。その結果、外国人女性を嫁として斡旋するブローカーが暗躍しています。一人当たり70~100万円ほどで売買されているといわれています。このような愛情のない結婚によって、多くの悲劇が生まれ、韓国人男性の評判はさらに大きく下がるという悪循環に陥っています。
韓国人の夫から虐待を受けた末に殺されたり自殺する外国人女性が続出した結果、05年にフィリピン、10年にカンボジア、12年にベトナムといった国々が韓国人男性との結婚を禁止する法律を制定したのです。13年にはキルギスでも同様の法案が議会にかけられ、現在も検討中といわれています。
12年4月19日付東亜日報は、韓国農村経済研究院が全国34の農村部に暮らす国際結婚した400世帯を面接調査したところ、外国人妻の約2割が「ここ1年で家庭内暴力を経験した」と答えたと報じています。また、韓国の女性家族部の調査では、家庭内暴力を受けている外国人妻は7割にも上っています。
深刻な家庭内暴力
朴槿恵大統領は、就任時に公約として「4大社会悪の根絶」を掲げました。4大社会悪とは、学校内暴力、性暴力、家庭内暴力、不良食品を指します。つまり、それだけこの4つが国内で深刻な状況にあることを意味しています。
特に家庭内暴力は深刻です。韓国は地域や血縁、学校、仕事などにおいて人間関係が濃密です。それだけに、その中には侵すことのできない不文律が多くあり、親族や地域内にあって家訓や習慣に反すれば、嫁は激しく虐待を受けます。
韓国の有名なことわざに、「女は3日殴らないと狐になる」というものがあります。つまり、殴って従わせることは当然との考えが根底にあるのです。学校などで、時間をかけて根本的に男女同権の思想を教育していかなければ、家庭内暴力の根絶は不可能でしょう。
日本の内閣府がまとめた13年版「男女共同参画白書」によれば、韓国の女性管理職の比率はわずか9.4%です。アメリカ43%、イギリス35.7%、フランス38.7%などに比べて圧倒的に低いことがわかります。ちなみに、日本も11.1%と低く、安倍晋三政権は女性の地位向上を政策の前面に押し出しています。一方の朴政権は、まだ具体的な施策を打ち出せていません。
韓国人男性が女性を同等に見るようになれば、女性の地位が向上するとともに男性自身の国際的悪評も払拭できるようになるでしょう。女性初の大統領に就任し、女性の地位向上への施策が期待される朴大統領には、ぜひともその道筋をつけてもらいたいところです。
(文=林秀英/ジャーナリスト)