さいたま小4殺害、義父が逮捕…義父と息子、母親の愛情奪い合うライバル関係だった可能性
まず、父親と同じようなエリートコースを歩むことができず、家庭内暴力を繰り返し、口癖のように「ぶっ殺す」と言っていた長男は、両親にとって望まぬ子供だったはずで、消してしまいたいと思ったとしても不思議ではない。同時に、ひきこもったままの生活を続けていたら、親が亡くなった後困窮するかもしれないので、「死んだほうが幸せ」と父親が考えた可能性もある。
今回の事件は、望まぬ子供を消すため
それでは、今回の事件の動機は何か? やはり、一番強い動機として考えられるのは、(1)望まぬ子供を消すためだろう。
殺害された遼佑くんと義父との間に血のつながりはなかったということなので、この父子の間に愛情があったかどうか、疑問である。むしろ、母親の愛情を奪い合うライバル関係にあったのではないかと私は思う。
母親が息子を連れて再婚した場合、義父と息子は母親の愛情をめぐってライバル関係になりやすい。母親が献身的に息子の世話をしたり、楽しそうに息子と話したりしているのを見て、義父が嫉妬し、不機嫌になるという話を聞くことも少なくない。
遼佑くんの母親は、義父よりも10歳年上の42歳ということなので、この義父は母性を求めて結婚した可能性もある。そういう場合、義理の息子がいなければ、自分がもっと大切にしてもらえるのにとか、自分にもっと愛情を注いでもらえるのにとか、この義父が考えたとしても不思議ではない。
また、遼佑くんは義父を「お父さん」と呼んでいたわけではなく、「○○さん」と呼んでいたようだ。そのため、義父は、父親としてきちんと認識されていないし、尊敬もされていないという不満を抱いていたかもしれない。おまけに、無職であるがゆえのコンプレックスもあいまって、軽んじられていると日頃から感じており、その鬱憤が何かのきっかけで爆発したのではないか。
一連の経緯から、計画的な犯行ではなく、きわめて衝動的かつ短絡的な犯行のように見える。どのような葛藤が家族の間にあり、何が最後の引き金になったのか、解明すべきだろう。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
片田珠美『子どもを攻撃せずにはいられない親』(PHP新書) 2019年