日系企業が、韓国プロ野球界進出を果たすかもしれない。日本では「Jトラスト株式会社」との名で知られ、韓国では「J TRUST」グループとして事業展開している金融グループが、韓国プロ野球球団・ヒーローズのネーミングスポンサー契約を協議しているというのだ。
ヒーローズは2008年、外資系投資会社とされるセンテニアル・インベストメント主導で、株式会社ソウル・ヒーローズとして創設。他球団が特定の母体企業を持つ中、韓国プロスポーツ史上初となるネーミングライツによる経営を実施。初年度は民間たばこ会社ウリ・タバコとスポンサー契約を交わして「ウリ・ヒーローズ」としてスタートを切るが、途中、ウリ・タバコのスポンサー料未払いなどで「ヒーローズ」となる。財政難に苦しむが、10年から業界3位のタイヤメーカーであるネクセン・タイヤがメインスポンサーとなり、「ネクセン・ヒーローズ」として活動してきた。そのネクセンとのスポンサー契約が今季で切れることもあって、新たなスポンサーとしてJ TRUSTグループが浮上したのだ。
ただ、この一報を受けた野球ファンの反発は激しい。世論調査機関であるリアルメーターが実施したアンケート結果によると、両者の契約締結に反対が64%。賛成は11.6%で、約5.5倍も反対が多かった。メディアも「ヒーローズ、“黒い金”をなぜ受け取る」(スポーツ新聞・スポーツ東亜)、「ヒーローズ、金が少なくても国内企業を選ぶべき」(ネットメディア「ノーカットニュース」)などと、かなり否定的だ。
なぜ、否定的で反発が激しいのか。ひとつは、J TRUSTグループのイメージである。12年に韓国進出したJ TRUSTグループは、JT親愛貯蓄銀行、JTキャピタル、JT貯蓄銀行などを展開しており、現在では総資産約2兆2000億ウォンにまで成長。銀行などの「第一金融圏」に次ぐ、「第二金融圏」(信用組合、郵便貯金、保険・証券会社、投信会社など)の代表格になっており、将来的な韓国上場も発表しているが、韓国では貸付事業もしており、販売商品の大部分が最低12%から最高29.2%の高金利融資商品が多いことから、貸金業者としてのイメージも強い。韓国では貸金業は「信用等級の低い庶民を蚕食する業者」と見る向きが強く、その広報宣伝に加担することは“反庶民”だと決めつけられる。9月も、J TRUSTグループの企業広告に出演した人気女優コ・ソヨンが猛烈なバッシングを受けて、自ら反省文を発表し広告出演契約解除に至ったほどだ(参照記事 http://biz-journal.jp/2015/10/post_11811.html)。
高額なスポンサー料で揺れるヒーローズ
こうした流れから、ヒーローズとJ TRUSTのスポンサー契約に反対する声は大きいが、さらにファンたちの感情を逆なでしているのは、J TRUSTグループが日系企業であるということだ。依然として“親日”を良しとしない風潮がある中、日系企業がネーミングライツ・スポンサーとはいえ、韓国プロ野球に参入することは言語道断というわけだ。ファンの間では「『J TRUST』のJは「JAPAN」の略語だ」といった噂まで流れ(正しくは「Justice/公正)、猛反対している。野球解説者であるホ・グヨン氏も、「韓国最高のスポーツであるプロ野球のイメージを失墜させないスポンサーを探さなければならない。ヒーローズは、ファンと国民情緒を無視してはならない」と意見を述べているほどだ。