大学入学以来、普通の異性愛者を装ってきた彼女は、「彼氏がいない」という理由だけで容姿に関する暴言を幾度となく浴びせられたという。そんな生活の中、とうとう「このままじゃ耐えられない」と感じ、カミングアウトを強行したそうだ。幸い、友人たちは彼女の性的志向をポジティブに受け入れてくれ、中には「実は私も……」とカミングアウトしてくる人もいたという。
「性的志向を、ただのプライベートな問題にするのをあきらめることで人生を変えられるなら、あきらめる価値があると思った」というアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)の言葉を借りて、大々的なカミングアウトをした彼女は、自らのカミングアウトによって周囲が少しずつ良い方向に変わっていく様を目の当たりにし、さらなる勇気も得たという。
ソウル大学学生会会長選挙に立候補した彼女が掲げたスローガンは「多様性に向けたひとつの動き」。性的少数者としての苦悩を暗示させつつ、演説では「正常性という枠に無理やり合わせなくてもいい世界、ありのままの姿を肯定し、堂々と生きられる世界であってほしい」と宣言。その言葉には、多様性を認め合う社会への熱望が強く表れており、自分をはじめとするソウル大学の在学生たち全員が、「存在だけで美しいと認められる学校にしたい」と表明した。大学公式サイトにもアップされたその演説文は、サーバーがフリーズするほど話題になったらしい。
Twitterでは、たくさんの人が「ボミちゃんおめでとう」というハッシュタグを使って彼女のカミングアウトを祝福。「カッコいい人」「いつかは当たり前のことになりますように」など、前向きな反応がほとんどだ。あらゆる性的少数者人権団体からも歓迎され、「ソウル大学史上初のレズビアン学生会会長の当選と活躍を期待します」との応援メッセージが多数寄せられている。
入学しただけでエリートのレッテルを貼られ、少し努力すれば人より安定した人生を歩めるはずのソウル大学の学生が、自らマイノリティであると宣言した今回の出来事に、衝撃を受けている韓国社会。さすがに時代の変化を感じざるを得ない。
単独候補である彼女は、4日間行われる選挙で過半数を得票すれば新会長に就任できる。韓国の超エリートたちが集いしのぎを削り合うソウル大学で、果たして「LGBT革命」は起きるだろうか。同じ韓国に生きるひとりの人間として、大いに注目している。
(文=李ハナ)