6割が被害を訴えたパワハラについて――
女性アートディレクター・20代「(発注書もなかったので)『一筆書いてほしい』と言ったら『仕事を切るぞ』『発注書がほしいとか言うんなら、最初から仕事しなかった』と言われた」
女性漫画家・40代「無償での追加作業(際限なく要求されることも)、納品が完了しないと代金が支払われないので抵抗できない」
女性編集者・50代「会社組織でない個人事業主だからという理由で、消費税や経費を払ってくれない取引先もいる」
女性通訳・翻訳・60代「公的機関でありながら、就業条件、報酬等勝手に改悪しているところがある」
女性編集者・40代「事前に(仕事の)条件提示のない会社も多い。『契約書を作ってください』と依頼することで『面倒なフリーランス』と認識されることも」
女性脚本家・30代「セクハラやパワハラに堪えかねてやめていく、残ったとしても人格が歪んでしまう。本当にたくさん見てきました」
女性編集者・50代「働き方改革は正社員の残業をなくす分、スケジュールが厳しくフリーランスにしわ寄せがきている。しかも、(仕事上の)要求は増えているのに料金は低くなっている」
女性漫画家・40代「発注側と受注側(個人事業主)が対等に取引できる契約書が必要」
女性アートディレクター・50代「仕事を依頼するからには最低限守られる契約の形とかあればと思います」
女性アートディレクター・40代「フリーランスは訴えに出ると仕事がなくなる(収入が減らされる)のでは、と常に弱い立場でおびえている。女性だからという理由で受けるハラスメントの多さを理解してほしい」
以上のように、フリーランスの立場は業界の風土を映してことさら弱く、相手側からつけ込まれやすい。国の年金政策も、働き方改革も、弱者で少数派の個人事業主はそもそも政府当局者の念頭に置かれていない。同じ働くサラリーマンも、自らの年金受給額に関心を向けるばかりで、はなから老後の生活をあきらめている多くの人の実情を知らない。
NYは「フリーランスはタダじゃない法」を施行
しかし、風向きは変わった。ネットを通じた新しい働き方の台頭や人手不足による物流危機は、個人請け負いの存在価値を浮かび上がらせた。ニューヨーク市は2017年、「フリーランスはタダじゃない法」を施行。最低賃金を決め、800ドルを超える仕事は契約書の作成を義務づけた。
米配車大手のウーバー・テクノロジーズの本社があるカリフォルニア州では、2020年1月に労働者保護(運転手は個人事業主)のための州法を施行する。ネットを通じて単発の仕事を請け負う個人事業主らを従業員として扱い、社会保障税などの負担をウーバーに課す。
日本もこれにならい、まずは契約書の作成や従業員同様の扱いを義務づけ、法制化する必要がある。苦しむ個人事業主への理不尽な慣行をやめさせ、能力・技能を発揮できる働きやすい環境をつくる必要がある。そして、現行の年金モデルを根本から改革し、基礎年金で国民に必要最少限の生活が維持できるようにしなければならない。
(文=北沢栄/ジャーナリスト)