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東京五輪マラソン移転の裏に、2030年「札幌五輪」招致シナリオ

文=山田稔/ジャーナリスト

 2020年東京五輪では、札幌ドームでサッカーの男女1次リーグの試合が行われる。加えてマラソン、競歩の札幌開催が決まったことで、外国人観光客の訪問、全世界へのテレビ中継などで札幌の知名度は大きくアップする。サッカー、マラソン、競歩の運営が順調に行われれば、「札幌や招致に関心がある都市との対話をスタートできる」(2019年6月)と発言したバッハ会長らIOCの印象も良くなるだろう。地元住民の意思がもっとも重要だが、2030年冬季五輪招致に向け大きなステップとなることは間違いない。

アジア客大半のインバウンド観光から脱却の可能性

 マラソン開催は北海道内の観光にも大きな影響を及ぼしそうだ。2018年度の北海道の観光客数は北海道胆振東部地震(2018年9月)の影響で、第2四半期こそ前年度比4.8%の減少となったが、通期では5520万人(同1.6%減)と微減にとどまった。外国人客に限ってみれば32万人増の312万人(同11.6%増)と好調が持続されている。

 2018年度の札幌市の観光客数は1584万6000人で前年度比3.8%増。外国人宿泊客(観光以外も含む)は271万9000人で同5.7%増だった。こちらもインバウンド人気は好調だ。

 外国人客の内訳は道、札幌市ともにアジア客が大半。道は外国人客312万人のうち約269万人がアジア客で構成比は86%。韓国73.1万人、中国70.9万人、台湾59.4万人、タイ23.5万人、香港20.5万人の順。札幌市はアジア客が81.7%を占めた。中国67万人、韓国63.4万人、台湾50.2万人、香港21.1万人、タイ20.2万人。同じような構成でアジア依存が高い。

 北海道庁の資料で見ると、米国(10万3400人)、オーストラリア(6万8400人)、カナダ(2万700人)、ロシア(1万7900人)といった国が目立つ程度。米国やオーストラリアは1-3月のウインターシーズンが5、6割。ニセコや富良野が人気だ。五輪開催時期の夏場(7-9月)は、米国は17%、オーストラリアは11%でしかない。韓国の27%、中国の18%に比べ、欧米からの夏場の客は圧倒的に少ない。

 マラソン中継や関連番組で夏の札幌、北海道の快適さや大自然の素晴らしさが宣伝されれば、滞在日数が長く、観光消費額が多い欧米系観光客の増加に結びつき、アジア依存からの脱却を図るきっかけになる可能性がある。

 札幌への一極集中が進み、ほかの地域は観光以外はあまり元気がない北海道だが、2020年に白老町にアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が開館、2023年には北広島市に日本ハムの新球場「北海道ボールパーク」(仮称)が開業する予定。北海道新幹線も2030年には札幌まで延伸される見通しだ。

 札幌でのマラソン開催が、今後の北海道活性化の起爆剤になればいいのだが。

(文=山田稔/ジャーナリスト)

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