トランプは戦争リスクを抑制しようとしていた
トランプ大統領と官僚との闘いとは、具体的にはどのようなものだったのだろうか。高級官僚は下院の調査に答え、政府がトランプ氏の「やんちゃな外交運営」の策略にはまったと述べた。政府内部で知ったことに警戒感を覚え、トランプ氏の目的を妨げようと、命令に従うのをわざと遅らせたり、大統領に情報を上げなかったり、記者や味方の議員に情報をリークし、介入させたりした官僚もいたという。
ニューヨーク・タイムズは、こうした高級官僚の行動を批判しない。けれども官僚の仕事とは本来、国民に選挙で選ばれた大統領の指示を忠実に遂行することのはずだ。逆に大統領の政策を批判したり妨害したりするとは、まさに「国家に従わない官僚集団」というディープステートの定義そのままである。
百歩譲って、トランプ大統領の外交政策が米国や世界の安全を危うくするものであれば、それに従わないことは道徳的に正しい行為として認められるかもしれない。しかし、実際はどうか。
トランプ氏はロシアと友好関係を取り戻そうとした。これに対し情報機関や軍、国務省などのディープステートは猛反対した。トランプ氏はアフガニスタン駐留米軍を撤退させようとした。一方、ディープステートは強く抵抗した。トランプ氏はシリア内戦における米国の役割を過激派組織「イスラム国(IS)」の打倒に絞ろうとした。これに対しディープステートはアサド政権を転覆するよう主張した。
いずれのケースもトランプ氏が軍の利用を抑制し、戦争のリスクを最小限に抑えようとしたのに対し、ディープステートはむしろ戦争を誘発・拡大させようとしている。ディープステートが米国の軍事産業と利権を通じて密接に結びついていることと無縁ではないだろう。米国や世界の安全を危うくしているのはトランプ氏ではなくディープステートの側であり、トランプ氏の外交方針に抵抗する正当な理由は認められない。
ところが米欧の主流メディアはディープステートの側につき、トランプ氏を攻撃する。トランプ氏の選挙陣営が2016年の大統領選でロシアと共謀したとされるロシア疑惑をめぐっては、政府内からリークされたとみられる真偽不明の情報に基づき、トランプ氏を一方的に有罪と決めつけ、非難した。結局、モラー特別検察官による捜査にもかかわらず、共謀は立証されなかった。